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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2022年10月号

牛肉輸出量、日本向けは米国産に押され大幅減

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肉牛取引価格が反発、上昇傾向に
 肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年8月に入り、下落傾向から一転して上昇傾向となり、同月23日時点では1キログラム当たり1037豪セント(1007円:1豪ドル=97.14円(注1))と昨年同時期の水準まで戻した(図1)。
 現地報道によると、インドネシアで発生している口蹄疫が豪州国内へ侵入するとの懸念が高まる中で、投機的な動きや穀物価格の上昇などもあったことで、7月までは下落傾向で推移していた。しかし、8月は前月までの下落傾向の相場を考慮した売り控えの動きや、依然として雨が多く飼料供給も潤沢なことで牛を留保する傾向もあり、肉牛の供給が滞っていることが価格上昇の要因としている。

(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年8月末TTS相場。

 
と畜頭数と牛肉生産量は増加傾向に転換
 豪州統計局(ABS)が2022年8月に公表した統計によると、同年4〜6月期の牛と畜頭数は146万頭(前期比2.5%増)と同年1〜3月期までの減少傾向から一転して増加に転じている(図2)。この結果、牛肉生産量は46万6700トン(同2.9%増)と同様に増加に転じている。
 近年、と畜頭数に比べ、牛肉生産量が多くなっている要因として、1頭当たりの平均枝肉重量が増加していることが挙げられる(図3)。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、多雨により飼料確保が容易なことや国内の牛群全体の遺伝的改良が進展していること、また、フィードロットによる肥育管理が適切に行われていることなどから、平均枝肉重量が高く維持されているとしている。

 
 豪州フィードロット協会(ALFA)によると、22年4〜6月期のフィードロット飼養頭数は、119万5466頭と前期から7万4461頭減少したが、フィードロットの稼働率は81%と依然高い水準になっている(注2)

(注2) 海外情報「2022年6月末のフィードロット飼養頭数、過去3番目の高水準(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003358.html)を参照されたい。

牛肉輸出量は再び前年同月比減
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2022年7月の牛肉輸出量は7万4949トン(前年同月比7.7%減)とかなりの程度減少し、2カ月連続の前年同月比増から再び減少に転じた(表)。
 輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは1万8551トン(同23.3%減)と大幅に減少しており、22年1〜7月の累計でも12万7060トン(前年同期比6.6%減)とかなりの程度減少している。現地報道によると、豪州からの牛肉供給不足に加え、米国の干ばつによる牛群整理のため、米国産の穀物肥育牛肉が日本に多く流れているためとしている。
韓国向けは1万5012トン(前年同月比7.2%増)とかなりの程度増加しており、1〜7月の累計では8万5997トン(前年同期比4.6%減)とやや減少している。MLAによると、韓国政府は本年7月20日から年末まで、国内のインフレ対策として10万トンの輸入牛肉の枠内関税を0%に引き下げており、豪州の牛肉輸出業者にとって輸出を伸ばす大きな機会になるとしている。


(調査情報部 国際調査グループ)