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海外の需給動向【鶏肉/ブラジル】畜産の情報 2022年10月号

22年鶏肉輸出量は増加傾向で推移、輸出単価は大幅高

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22年1〜6月の鶏肉生産量、前年同期比1.5%増
 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2022年1〜6月の鶏肉生産量は739万トン(前年同期比1.5%増)と前年同期をわずかに上回った(図1)。同国の年間鶏肉生産量は21年まで3年連続で増加しており、22年も増加傾向が続いている。22年は飼料価格高により生産コストが上昇する中で、収益性の低下やインフレによる国内消費の停滞が見られるものの、同国産鶏肉に対する海外からの需要が堅調であることが増加の要因とみられる。


 
22年1〜7月の鶏肉輸出量は前年同期比5.6%増
 ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2022年1〜7月の鶏肉輸出量は257万4213トン(前年同期比5.6%増)と前年同期をやや上回った(表)。米ドルに対するレアル安の為替相場に加え、アジア、EUおよび北米などで発生した高病原性鳥インフルエンザ、ウクライナ情勢の影響などにより多くの地域で動物性タンパク質の不足が生じたためとみられる。また、堅調な海外需要を反映して、輸出単価(米ドルベース)は同26.0%高と大幅に上昇した。
 
 
 輸出先別に見ると、最大の中国向けは33万1279トン(同12.2%減)と前年同期をかなり大きく下回った。特に7月の同国向け輸出量は3万7562トン(前年同月比40.3%減)と大幅に減少し、アラブ首長国連邦向けを下回り第2位となった。この減少要因の一つとして、ブラジル産鶏肉の価格上昇があるとみられる。アラブ首長国連邦向けは28万2239トン(前年同期比55.9%増)と大幅に増加し、中国に次ぐ輸出先となった。また、日本向けは23万1902トン(同0.8%増)と前年同期をわずかに上回った。一方、サウジアラビア向けは20万386トン(同21.2%減)と大幅に減少した。これは同国が21年5月、ブラジル産輸入鶏肉からサルモネラ汚染が確認されたとして11カ所の鶏肉処理場からの輸入を停止したためである。このほか、メキシコ向けは9万5772トン(同35.5%増)と大幅に増加した。同国では21年6月、自由貿易協定を結んでいる米国、カナダ以外の国を対象に新たな輸入枠として3万トンを設定したこと、また、22年5月にインフレ対策として輸入関税の一時停止措置を講じたこと、さらに、前述の米国での高病原性鳥インフルエンザの影響から米国産鶏肉の輸入量が減少したことなどが要因とみられる。

鶏肉卸売価格、鶏肉供給量の減少などにより高水準で推移
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、ブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州、名目価格)は、堅調な需要を背景に2020年5月ごろから上昇傾向で推移し、21年9月中旬には統計が公表された04年以降で最高値となる1キログラム当たり8.57レアル(227円:1レアル=26.49円(注))を記録した(図2)。その後は価格高騰から需要が減退し、21年10月以降、価格は下落傾向に転じた。しかし、22年2月以降は、ウクライナ情勢や米国での高病原性鳥インフルエンザの発生などによる供給量の減少に加え、不安定な飼料供給に起因する生産コストの上昇などを反映して価格は再び上昇に転じ、8月下旬には同8.00レアル(212円)と高水準の状況が続いている。

 
(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年8月末のTTS相場。

(調査情報部 井田 俊二)