牛肉生産量は増加、牛肉在庫量は高止まり
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2022年8月の牛と畜頭数は301万8700頭(前年同月比6.5%増)とかなりの程度増加した(図1)。これは干ばつによるフィードロットへの導入・出荷が増加していることが要因とされている。これを受けて、8月の牛肉生産量も前年同月比6.2%増加した。
一方、同月末の牛肉在庫量は23万5200トン(同23.2%増)となった(図2)。前年同月比では大きく増加しているが、今年は春から夏にかけて季節的な在庫量の減少が見られず高止まりで推移していたことから、前月比では小幅な増加にとどまった。現地報道によると、生産量が増加しているにもかかわらず同月の在庫量の増加幅が少なかったのは、旺盛な需要を示唆しているためとされている。
卸売価格、高値で推移しつつも前年同月比で大きく下回る
米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、2022年8月の牛肉卸売価格(カットアウトバリュー)は、100ポンド当たり264.9米ドル(1キログラム当たり851.54円:1米ドル=145.81円
(注)、前年同月比17.6%安)となり、平年と比較すると高値で推移しつつも前年同月を大幅に下回った(図3)。現地報道によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により価格が乱高下した過去2カ年とは異なり、今年は卸売価格が安定していることで、小売店や外食産業で牛肉を取り扱う量が増えて牛肉の需要を下支えしているとしている。
(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年9月末TTS相場。
牛肉輸出量、記録的ペースで推移
USDA/ERSによると、2022年7月の牛肉輸出量は13万9219トン(前年同月比3.3%増)と引き続き好調に推移している(表)。
輸出先別に見ると、7月は日本向けおよび中国向けが前年同月比でかなり増加した。また、輸出先第2位の韓国向けは前年同月比では減少しているものの、1〜7月の累計では前年同期から2.7%増加している。この結果、日本、韓国、中国の3カ国で同月の輸出量全体の66.3%を占めている。また、フィリピン、オランダなど比較的小規模な市場向けの輸出量も前年同期比で増加した。
この状況について米国食肉輸出連合会(USMEF)のホルストロム会長は、「米国産牛肉に対する世界の需要は、特に小売りレベルで驚くほど回復力がある」とし、今後のさらなる成長への期待を述べた。一方で、主要相手国通貨に対する米ドル高の為替相場に懸念を示している。
(調査情報部 上村 照子)