鹿児島大会は第1〜8区および特別区の九つの出品区があります(表)。そして、今大会は新しく特別区として高校および農業大学校の部が設定されました。次の通り概要をまとめます。
(1)特別区(高校および農業大学校の部)
特別区には全国から24校の出品がありました。この区の出品条件は、各道府県の改良方針に基づき出品校で生産・飼育したものを原則とし、自道府県内の学校間の連携によって生産したものも認められています。しかし、多くの学校では頭数がかなり限られた出品候補牛の中からの出品となるため、出品牛との巡り合わせも非常に重要な要素となってきます。さらに、その出品候補牛を鹿児島大会に出品するまでの長期間にわたり、毎日気持ちを込めて育成する
馴致作業は、それぞれに貴重な経験になったものと思います。また、審査会場における出品牛の展示と取り組み発表を通して、日頃の飼育管理における創意工夫や、和牛生産に対する熱い思いが多くの皆さんに伝わりました。出品牛の序列と取り組み発表の評価順位をそれぞれ勘案した結果、優等賞1席には鹿児島県立
曽於高等学校(写真1)、優等賞2席には宮崎県立小林秀峰高等学校(写真2)が選ばれました。それぞれの出品牛の素晴らしさはもちろんのことですが、特に取り組み発表において、曽於高等学校では学校内の肉用牛班全員が和牛生産地帯である曽於地区の一員として頑張っていることや、曽於の雌系「まつ系」から造成された「華忠良」を使って取り組んだことが特徴的でした。また、小林秀峰高校では自校内で平均分娩間隔357日という高いレベルの母牛群を構成し、地元
西諸県郡生産の種雄牛の利用を中心に改良を進めていることが素晴らしい点でした。
(2)肉牛の部
5年前の前回大会肉牛の部全体(183頭)と比較して、枝肉重量はやや小さくなったものの、ロース芯面積は3.5平方センチメートル大きくなり、その他歩留面についてはほとんど差がありませんでした。一方で脂肪交雑については、前回大会肉牛の部全体の平均牛脂肪交雑基準(BMS)No8.3に対して、今大会は肉牛の部出品牛166頭の平均BMSNo10.3となり、さらに成績が向上しました。同時に、ロース芯内の粗脂肪含量についても前回大会45.0%に対して、今大会は50.2%と増加しました。また、オレイン酸などのおいしさに関連する一価不飽和脂肪酸(MUFA)予測値において、平均値は前回大会の54.4%に対して、今大会は56.4%と成績が向上した一方、ばらつきは40.8〜67.4%と非常に大きく、新しい価値観の構築に向けての今後の課題と考えられました。そのような中で第7区「脂肪の質評価群」の優等賞1席は、宮崎県の種雄牛「第5安栄」の産子3頭1群のセットでした(写真3)。特に3頭ともにBMSNo11以上、平均BMSNo11.3、また、MUFAも3頭ともに62%以上、平均MUFA63.4%と特筆すべき優れた能力で、肉牛の部の名誉賞と、特別賞として脂肪の質の斉一賞も受賞した素晴らしい枝肉でした。
全共では効率的な牛肉生産を目指すため、出荷月齢が24カ月齢未満とされています。このような厳しい条件下においても、和牛は高品質の牛肉を生産できる素晴らしい産肉能力を備えていることを示すことができた点は肉牛の部のもう一つの成果です。前回大会から今大会に向けてのMUFAの成績向上を見ると、育種目標を明確に設定し、脂肪の質の情報や血統情報など正しい記録が収集できれば、必ずその目標は達成できるという一つのモデルケースともいえます。一般的には、出荷月齢24カ月で和牛は仕上がらないという意見もありますが、和牛の産肉能力が向上し、早熟早肥の改良が格段に進み、MUFAの値も改良が進んでいる昨今において、これらの特筆すべき長所を、どのように経営に生かしていくことができるのか、特に、出荷月齢の短縮は今後の検討課題です。
(3)種牛の部
肉用種の特徴を堅持しつつ、種牛性(飼い易さ、健全性、繁殖性など種牛としての良さ)のいっそうの改良と地域の特色ある牛づくりがテーマとなっています。従来から全共ごとに和牛の発育・体積は大きくなる傾向が認められてきましたが、前回大会から今大会まで和牛のサイズが大きく変化したということはありませんでした。一方で種牛性においては、全体的に輪郭鮮明で品位に富むものが多く、総じて前回大会よりも種牛性に優れていました。また、種牛の部においては、出品区によって少し条件が異なっており、特に第4区「繁殖雌牛群」については、3代以上自道県内産となっており、地域の特色が表れた出品となりました。第4区「繁殖雌牛群」の優等賞1席は、鹿児島県の
姶良(和牛育種組合からの出品でした。この群は肉用種の特徴を堅持しつつも種牛性に優れ、輪郭鮮明で、体
緊り、骨緊りともに良く、体上線は平直で、肩付よろしく、肢勢正しく、雌牛らしい品位においては抜群でした(写真4)。従って、種牛の部の名誉賞と特別賞として品位賞も受賞しました。なお、品位に優れた繁殖雌牛は、繁殖能力に優れており、出品牛個々の平均分娩間隔は、344日(3産)、342日(3産)、385日(3産)で、3頭の平均は357日となっており、一年一産を達成している素晴らしい能力でした。和牛の産肉能力の改良を重視してきた昨今ですが、今後は一定レベル以上の産肉能力を備えた牛群の中で、繁殖能力に優れ、地域の特色を備えた母集団の構成が求められており、よりいっそう種牛能力の改良を推進していただきたいところです。