総飼養頭数、前年比2.8%減
カナダ統計局(Statistics Canada)によると、2022年7月1日時点の牛の総飼養頭数は1229万頭(前年同月比2.8%減)と1988年以来、最小の飼養頭数となった(図1)。同頭数は、2005年のピーク(1688万頭)から減少局面にあり、15年以降は横ばいで推移していた。内訳を見ると、繁殖雌牛が468万6000頭(同1.5%減)、未経産牛が187万8000頭(同5.1%減)といずれも減少しており、そのうち肉用後継牛が62万2000頭(同7.3%減)とかなりの程度減少した(表1)。米国農務省(USDA)は、21年に発生したカナダ西部での干ばつにより経産牛が
淘汰された結果、子牛出生頭数が減少したことや飼料コストの高騰、米国向けの生体牛輸出が増加していることが要因と分析している。現地報道によると、特にカナダ西部での頭数の減少が大きいとされ、肉牛生産の主要州であるサスカチュワン州の飼養頭数は前年から約11万頭、アルバータ州では10万頭以上それぞれ減少している。
生体牛輸出頭数、前年比大幅増
2022年1〜8月の米国向けの生体牛輸出頭数は、51万8503頭(前年同期比35.7%増)と大幅に増加した(図2)。内訳を見ると、肥育もと牛の輸出頭数が16万1844頭(同109.4%増)と前年の倍以上に増加している。その理由についてUSDAは、19年以降、米国で肉用牛の飼養頭数が減少する中、旺盛な同国内の需要と輸出需要が要因と分析している。
22年1〜8月の牛肉輸出量、前年同期比5.2%減
カナダ統計局によると、2022年8月の牛肉輸出量は、3万5876トン(前年同月比20.9%減)と大幅に減少し、22年1〜8月の累計では28万3063トン(前年同期比5.2%減)とやや減少した(表2)。同期累計を輸出先別に見ると、インフレによる牛肉価格の高騰を背景に、米国向けが21万3002トン(同0.9%減)とわずかに減少した。日本向けは3万3539トン(同0.5%増)とわずかに増加し、全体輸出量の8割近くを占める米国に次ぐ輸出先となっている。一方、昨年まで輸出量第3位であった中国向けは129トン(同99.0%減)と大幅に減少した。これは、21年12月にカナダの肥育牛農場で非定型の牛海綿状脳症(BSE)に感染した肉牛が検出され、中国がカナダ産牛肉の輸入を停止しているためである。アジア向けが低調の中、唯一韓国向けが1万1423トン(同69.7%増)と大幅に増加しており、輸出先としての市場価値が高まっている。
(調査情報部 伊藤 瑞基)