牛肉生産量、前年同期比1.7%減
欧州委員会によると、2022年1〜7月の牛肉生産量(EU27カ国)は、379万5330トン(前年同期比1.7%減)と前年をわずかに下回った(表1)。EUの牛肉生産量は、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の拡大に伴い20年から減少傾向で推移している。欧州委員会によると、飼料価格の高騰などにより生産者が早期出荷を進めたため、と畜頭数は増加したものの枝肉重量が減少したことが要因としている。ただし、国別に見ると状況は異なっている。21年12月時の牛飼養頭数が減少したフランスは生産量がやや減少(同4.9%減)、同じくドイツの生産量もかなりの程度減少(同9.9%減)している一方で、同飼養頭数が増加したスペイン、イタリア、アイルランドはいずれも前年同期を上回った。
22年9月の牛枝肉平均卸売価格
(注1)は、100キログラム当たり492.85ユーロ(7万3479円、1ユーロ=149.09円
(注2)、同25.1%高)と21年3月以降、引き続き前年同月を上回って推移している。これについて米国農務省(USDA)は、枝肉価格の高騰はと畜頭数の増加を促すものの、飼料の高騰による枝肉重量の減少により全体の牛肉生産量を押し下げる要因になると分析している。
(注1)若雄牛(A)、去勢牛(C)および若齢牛(Z)のうち枝肉の格付けが上(R)、枝肉の脂肪の付着度合が平均的(5段階中3)なものの平均価格(A/C/Z-R3)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年10月末TTS相場。
輸入量は前年同期比で増加するもパンデミック前には及ばず
2022年1〜8月の冷蔵および冷凍牛肉輸出量は、冷蔵牛肉の輸出量が前年同期比4.0%増とやや増加したものの、冷凍牛肉の輸出量が同9.2%減とかなりの程度減少したため、全体としては同1.9%減の29万3727トンとわずかに減少した(表2)。冷蔵、冷凍ともに英国向けが好調である。しかし、EU域内の供給量の減少と価格の高騰により、ボスニア・ヘルツェゴビナやスイス、フィリピン向けなどの減少が大きく、欧州委員会は22年通年の輸出量は前年比1.0%減と予測している。
一方、同年1〜8月の冷蔵および冷凍牛肉輸入量は主に英国からの増加を背景に同30.5%増と大幅に増加した(表3)。USDAによると、COVID−19からの経済の回復により特に南欧では観光部門の復活に後押しされる形で外食産業の牛肉需要が増加しているものの、牛肉価格の上昇によりEU全体では牛肉消費量は減少していると分析している。そのため、牛肉輸入量はコロナ禍以前の水準には戻っていない。
(調査情報部 上村 照子)