豪州東部の各地で洪水が発生
豪州では、2022年10月の多雨(図1)を受けて東部で洪水被害が発生した。現地報道では、河川の氾濫などにより、家畜や飼料などの物流に影響が生じたほか、農家では家畜を高台に移動させるなどの措置が取られたとしている。豪州気象局(BOM)は、今後も東部では平年以上の降雨があると予測している。
肉牛取引価格は今後も横ばいで推移の見込み
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年10月に入り、1キログラム当たり1040豪セント(1009円:1豪ドル=97.05円
(注1))前後の横ばいで推移している(図2)。
現地報道によると、洪水により家畜の出荷が制限されている一方、依然として牧草が潤沢にあり、今後も多雨が予想されることから、牛群再構築は持続され肉牛取引価格は当面横ばいで推移する可能性が高いとしている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年10月末TTS相場。
中国での需要増を背景に同国向け輸出が増加
牛肉生産では、依然として食肉処理施設での労働力不足や多雨による牛群再構築の持続などにより低調に推移しており、2022年9月の輸出量も7万295トン(前年同月比12.0%減)とかなり大きく減少した(表)。現地報道によると、海上運賃は一時の水準から下落基調にあるものの、輸出先におけるインフレなどにより、牛肉需要が鈍化しており、牛肉輸出にも影響が出ているとしている。
輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは1万5791トン(同26.3%減)、干ばつによる牛群整理で牛肉生産量が増加している米国向けも8589トン(同43.6%減)とともに大幅に減少している。一方、中国向けは1万4917トン(同20.0%増)と大幅に増加しているが、アナリストらによると、穀物肥育牛肉を中心に中国の牛肉需要が高まっていると分析している。
また、昨年12月に署名された英国とのFTAでは、発効初年度に年間3万5000トン、10年目に同11万トンの無税枠
(注2)が設定されており、英国への豪州産牛肉の輸出量増加が期待されている。これに関し豪州のアルバニージー首相は、今年末に発効予定とされていた本FTAについて、英国の首相交代などの政治的混乱を受け、英国内のFTA発効に向けた批准および協定発効が遅れる可能性があるとしている。
(注2)海外情報「英国政府、英豪FTAの合意内容の概要を発表」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002976.html)を参照されたい。
(調査情報部 国際調査グループ)