8月の生乳出荷量、前年同月比0.8%減
欧州委員会によると、2022年8月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1207万660トン(前年同月比0.8%減)と2カ月ぶりに前年同月をわずかに下回った(表)。
同月の生乳出荷量を国別に見ると、主要国ではオランダ(同2.2%増)、ポーランド(同1.9%増)、アイルランド(同0.9%増)が増加した一方で、フランス(同2.5%減)、イタリア(同6.3%減)が減少し、生乳出荷量が最も多いドイツ(同0.1%減)は前年同月並みとなった。
欧州委員会が10月5日に公表した農畜産物の短期的需給見通し(注1)では、22年の生乳出荷量についてポーランドは前年比増、オランダは前年並みと見込んでいるものの、フランスおよびドイツの減産分を補うには至らず、全体では前年比0.5%減と見込んでいる。さらに23年の生乳出荷量については、22年の熱波による飼料不足や生産費の高騰から、同0.2%減と見込んでいる。
(注1)海外情報「欧州委員会、生乳・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003388.html)を参照されたい。
生乳取引価格は依然として最高値を更新
2022年9月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり53.05ユーロ(7909円:1ユーロ=149.09円
(注2)、前年同月比42.3%高)と依然として最高値を更新しており、20カ月連続で前月を上回っている(図1)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年10月末TTS相場。
バターなどの乳製品価格は高水準で推移するも下降基調
欧州委員会が公表した直近の10月23日の週の乳製品価格を見ると、バターが100キログラム当たり692ユーロ(10万3170円)、脱脂粉乳が同358ユーロ(5万3374円)、全粉乳が同476ユーロ(7万967円)であり、高水準で推移するものの、緩やかな下落傾向にある(図2)。
同見通しによると、2022年の全粉乳および脱脂粉乳の価格は、6月末以降、緩やかに下落しており、ユーロ・ドル為替相場によりEUにとって相対的な優位性はあるものの、主要輸出競合国を上回る価格水準が輸出の妨げとなり、それぞれ前年比8.3%安および同2.0%安と見込んでいる。また、燃料費などの製造費の高騰も、22年の生産量の減少につながる可能性があるとしている。さらに、中国の全粉乳輸入需要の減少から、同国向け輸出割合が高いニュージーランドがバターや脱脂粉乳向けの生乳を増加させていることで、EUの脱脂粉乳輸出の抑制につながっているとしている。
(調査情報部 渡辺 淳一)