国産トウモロコシ価格、飼料用需要から下落は限定的と予想
中国農業農村部は2022年10月25日、「農産物需給動向分析月報(2022年9月)」を公表した。この中で、22年9月の国産トウモロコシ価格は前月からやや上昇となった(図1)。同月の国内のトウモロコシ需給を見ると、すでに収穫を終えた新穀の一部が国内市場に向けて供給される中で、養豚を中心とした飼料向け需要が引き続き高いことから、ややタイトな状況にあるとされている。短期的には今後、新穀が大量に供給されることで価格の下げ圧力は強くなるものの、高止まりしている養豚中心の飼料向け需要に加え、22年は肥料や借地料の高騰により生産コストが大幅に上昇していることから、価格の下落は限定的と予想されている。
各地の価格動向を見ると、主要養豚生産地である中国南部向け飼料原料集積地となる広東省黄埔港到着の輸入トウモロコシ価格(関税割当数量内:1%の関税+25%の追加関税)は、22年9月が1キログラム当たり3.06元(63円:1元=20.65円
(注))となった。3月以降、国産価格を上回って推移していた同価格は、5月をピークに下落し、国産と輸入の価格差は小さくなりつつあったが、米国でのトウモロコシ減産予測などもある中で一転して反発した。このため、同月の国産トウモロコシ価格(東北部産の同港到着価格)同2.92元(60円)に比べて同0.14元(3円)高となり、国産と輸入との価格差は再び開いている。
国産大豆価格、新穀の供給増で短期的には若干の下落と予想
2022年9月の国産大豆価格は、前月と変わらず高値安定で推移している(図2)。同月の国内の大豆の需給動向を見ると、すでに収穫を終えた新穀の一部が国内市場に向けて供給される一方で、国内の需要に大きな動きが見られないことから価格は高値安定の状況にある。また、トウモロコシと同じく大豆も生産コストが大幅に上昇したことで、生産者の多くは価格の上昇を期待しているとされている。短期的には今後、新穀が大量に供給されることで価格の下げ圧力は強くなり、若干の下落が予想されている。
各地の価格動向を見ると、主産地である黒竜江省の食用向け国産大豆平均取引価格は、9月が1キログラム当たり6.16元(127円、前年同月比7.9%高)と引き続き高い水準にある。また、大豆の国内指標価格の一つとなる山東省の国産大豆価格は、同6.52元(135円、同6.9%高)と前月同ながらも高い水準で推移している。国産大豆価格と輸入大豆との価格差は、大豆国際相場の上昇などからわずかに縮小し、同1.26元(26円)となった。
このような中で、大豆の輸入量は引き続き高い水準で推移しているが、高い輸入量を記録した前年からは減少している。22年(1〜8月)の輸入量は6133万トン(前年同期比8.6%減)、輸入額は世界的な穀物相場高の影響から同13.8%増の409億4800万米ドル(6兆1119億円:1米ドル=149.26円
(注))と報告されている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年10月末TTS相場。
22/23年度のトウモロコシの生産量を上方修正、大豆は変わらず
中国農業農村部は2022年10月12日、最新の「中国の農産物需給状況分析」を公表した。このうち、22/23年度(10月〜翌9月)のトウモロコシの需給見通しについて、作付面積、収穫面積、生産量がいずれも前月から上方修正された(表1)。
今回(10月)の予測では、作付面積、収穫面積はいずれも前月から42万6000ヘクタール上方修正の4295万ヘクタール(前年度比0.9%減)、生産量は同275万トン上方修正の2億7531万トン(同1.0%増)となった。
この結果、輸入量、消費量に変更がなかったことで、同年度のトウモロコシの過不足は279万トンの余剰(同59.2%減)が見込まれている。
今回の上方修正については、10月に入り主産地の多くでトウモロコシの収穫作業が進む中で、確実な増産が見込まれたことによるものと推察される。22年は、トウモロコシ主産地などで干ばつや大雨による洪水などが発生したことで、現地穀物関係者からは減産との見方が出ていたが、結果として生産への影響はなかったとみられる。
一方で、大豆の需給見通しについては、収穫面積、生産量などいずれも変更がなかった(表2)。
(調査情報部 横田 徹)