畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 肥育牛価格、今年最高値を記録

畜産 2023年1月号 海外需給/牛肉 米国

肥育牛価格、今年最高値を記録

印刷ページ
干ばつにより繁殖雌牛の淘汰とうたが進む
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2022年10月の牛と畜頭数は284万2300頭(前年同月比1.7%増)とわずかに増加した(図1)。これを受けて、10月の牛肉生産量は109万390トン(同1.7%増)となった。また、10月の肉用経産牛のと畜頭数は35万頭(同12.3%増)となり、干ばつにより繁殖雌牛の淘汰が進むことで、牛群縮小による将来の生産減が懸念されている。USDAは、23年の牛肉生産量の予測を4万1000トン引き下げ、1191万8000トン(前年比7.3%減)とした。


 
 肥育牛価格、旺盛な需要により今年最高値に
 米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、2022年10月の肥育牛価格は旺盛な需要により100ポンド当たり149.00米ドル(1キログラム当たり459円:1米ドル=139.87円(注)、前年同月比19.3%高)となり、今年の最高値を更新した(図2)。現地報道によると、食肉処理加工業者は平日のと畜量を増やして1頭当たりの処理コストを削減し、肥育牛価格の購入コスト高に対応している。一方、卸売価格(カットアウトバリュー)は100ポンド当たり251.58米ドル(同776円)と、インフレによる需要減の影響を受けて前月より下げつつも、堅調に推移した(図3)。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年11月末TTS相場。






牛肉輸出は減速傾向
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2022年9月の牛肉輸出量は12万5092トン(前年同月比5.7%減)と今年初めて前年を下回ったものの、同年1〜9月の累計輸出量は122万1081トン(前年同期比4.6%増)とやや増加している(表)。
 輸出先別に見ると、9月はメキシコとフィリピンを除き、日本、韓国、中国など、ほぼすべての主要輸出先で減少した。特に中国向けは、これまで前年同月を上回る水準で推移してきた中で、同国のゼロコロナ政策などの影響を受け、前年同月比2.8%減となった。これを受けてUSDAは、22年の輸出見通しを前月から1万3000トン引き下げ、160万6000トンとした。
 こうした状況について米国食肉輸出連合会(USMEF)のホルストロム会長は、「米ドル高や物流上の課題、中国の(都市)封鎖などは牛肉輸出にとって逆風だが、9月の輸出量は依然として過去最高水準であり、注目に値する」と述べ、米国牛肉需要の底堅さを強調した。


 
(調査情報部 小林 大祐)