肉牛取引価格が急落
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年11月半ばころから大きく下落し、同月30日時点では1キログラム当たり888豪セント(842円:1豪ドル=94.79円
(注1))と約4カ月ぶりの安値を記録した(図1)。
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、インフレによる生産資材価格の高騰や長雨によるフィードロットでの肥育不良などにより、牛の需要が伸び悩んでいるとし、現地報道では、この下落傾向は12月末ごろまで続く見込みとしている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年11月末TTS相場。
と畜頭数と牛肉生産量は増加傾向で推移
豪州統計局(ABS)が2022年11月に公表した統計によると、同年7〜9月期の牛と畜頭数は148万頭(前期比1.9%増)とわずかに増加し、2期連続で増加している(図2)。牛肉生産量についても、47万5600トン(同2.3%増)とわずかに増加している。
また、同年7〜9月期の雌牛のと畜頭数割合は、43.3%と前期比で1.1ポイント上昇したが(図3)、雨が多く飼料確保が容易であることを背景に、依然として牧草飼育を主体に牛群再構築段階にあると言える。
現地報道では、23年にはと畜頭数および牛肉生産量が顕著に回復してくる見込みとしているが、依然として食肉処理施設における労働力不足は継続している。このような中、豪州食肉産業協議会(AMIC)は、今後3〜6カ月以内に牛が多数食肉処理施設に出荷されても、稼働率を上げられず処理しきれないだろうとしている。
他方で豪州フィードロット協会(ALFA)によると、22年7〜9月期のフィードロット飼養頭数は、105万6056頭(前期比11.7%減)とかなり大きく減少し、フィードロットの稼働率も69.9%と前期より10ポイント以上、下落している
(注2)。今後、穀物飼料価格の高騰など、経営環境が厳しいフィードロットにおける牛肉生産の動向が注目される。
(注2)海外情報「2022年9月末のフィードロット飼養頭数、2期連続で減少(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003403.html)を参照されたい。
牛肉輸出量の低迷は継続
豪州農林水産省(DAFF)によると、2022年10月の牛肉輸出量は7万2979トン(前年同月比1.8%減)とわずかに減少した(表)。
輸出先別に見ると、日本向けは1万5751トン(同16.1%減)と大幅に減少したほか、韓国向けも1万3297トン(同10.9%減)とかなりの程度減少している。現地報道によると、米国の干ばつによる牛群淘汰(とうた)により、日本や韓国向けには比較的安価な米国産の穀物肥育牛肉が輸出されているとしている。
このような中で、22年11月23日に豪英FTA協定に関する豪州議会の批准手続きが完了している。現地報道では、11月15〜16日に開催されたG20バリ・サミットでの非公式な場で、豪州のアルバニージー首相が英国のスナク首相に対し、英国側の批准手続きを経た後、23年第1四半期には同協定が発効されることを望む旨の言及をしたとしている。
(調査情報部 国際調査グループ)