牛肉生産量は増加
中国国家統計局によると、2022年1〜9月期の牛肉生産量は、前年同期比3.6%増の485万トンとなった(図1)。
牛肉価格は引き続き高値で推移も政府は警戒か
牛肉卸売価格は、2019年以降、需要増加や飼料価格高騰などから高値で推移している。21年4〜9月にかけてわずかに下落傾向となったものの、その後は小幅ながらも上昇に転じ、22年11月には1キログラム当たり75.3元(1486円:1元=19.73円(注))となった(図2)。今後の価格動向について現地関係者の間では、需要期である冬場を迎えることから、小幅な上昇が継続するとの見方が大勢を占めている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年11月末TTS相場。
また、中国政府は22年9〜10月にかけて、数量は少ないものの国家備蓄制度による牛・羊肉の買い入れおよび保管を4回実施した(合計0.98トン)。一方、現地専門家からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で需要全体が振るわない中で牛肉の輸入量が増加を続けていることから、市場の需給バランスが崩れつつあるとの意見もある。このような状況を踏まえ、今回の政府買い入れについて、価格支持という実効性を狙ったものではなく、国内の牛肉価格を堅持するという政府のけん制意思を市場に示す意図があったものとの見方がある。
牛肉輸入量は引き続き増加
中国では牛肉生産の拡大が進む一方で、高まる需要に追い付かず牛肉輸入量は増加傾向で推移している。
2022年1〜10月の牛肉輸入実績を見ると、冷凍・冷蔵ともにかなり大きく増加した(表1、2)。COVID-19の影響で需要全体が停滞傾向であるとされる中で牛肉輸入量が好調である要因について現地専門家からは、牛肉が主に消費される外食産業は不振ではあるものの、輸入牛肉は国産牛肉に比べて、(1)安価であることから消費者が比較的手に取りやすい(2)小売業者、外食業者とも、収益性が高い輸入牛肉の取り扱いを好む傾向にある―との意見が聞かれた。
また、米国農務省は10月12日、23年の中国の牛肉輸入動向(冷凍および冷蔵)について、本年よりもかなりの程度減少するとの予測を公表した(22年:314万トン、23年:285万トン、22年比9.2%減)。その要因として中国での牛肉生産量の増加(750万トン、同5.3%増)が挙げられているが、これに加え、消費の伸びの鈍化(22年:前年比2.6%増、23年:同0.8%増)も要因として見込まれると考えられる。また同資料では、中国などの輸入減退により、23年の世界全体の牛肉輸出量(1214万トン、同1.2%減)も減少すると予測されている。
(調査情報部 阿南 小有里)