豚肉生産量は引き続き前年同月比減
欧州委員会によると、2022年8月の豚肉生産量(EU27カ国)は、180万4770トン(前年同月比3.7%減)とやや減少した(図1)。同月のと畜頭数は前月から1割近く増えたものの、1992万頭(同2.7%減)と前年同月を下回り、また、1頭当たり枝肉重量も90.2キログラム(同1.0%減)と減少したことで、前年同月の生産量には及ばなかった。
同月の生産量を主要生産国別に見ると、デンマーク(同1.6%増)、オランダ(同4.5%増)が前年同月を上回ったものの、スペイン(同5.3%減)、ドイツ(7.1%減)、フランス(2.0%減)の上位3カ国を始め多くの国が前年同月を下回ったことで、全体としては減産となった(表1)。欧州委員会によると、主要国のドイツでは、アフリカ豚熱が依然として豚肉生産に大きな影響を及ぼしているとしている。また、飼料価格をはじめとする継続的な生産資材の高騰と散発しているアフリカ豚熱の影響により、EUの豚肉生産量は今後も減少傾向で推移すると見込んでいる。
卸売価格は引き続き高値で推移
欧州委員会によると、2022年10月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比55.3%高の100キログラム当たり202.74ユーロ(2万9414円:1ユーロ=145.08円
(注))となり、前月より下がったものの、引き続き前年同月を大幅に上回った(図2)。牛肉の代替としてより安価な豚肉が選択されている傾向があり、供給量が減る中で、底堅い需要から今後も堅調に推移するとしている。現地報道によると、10月の下落は、9月に記録した高値への反発によるものとしている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年11月末TTS相場。
22年8月の輸出量、中国向けの減少から前年同月比減
欧州委員会によると、2022年8月のEU域外への豚肉(冷蔵・冷凍)輸出量(EU27カ国)は、24万6869トン(前年同月比3.1%減)と前年同月をやや下回った(表2)。主要輸出先別に見ると、全体の34%を占める中国向けの減少(同12.5%減)が大きく、全体の減少要因となっている。一方で、ユーロに対する為替相場が比較的安定した日本向けや、アフリカ豚熱発生により減少する国内生産を補うために輸入税率を引き下げたフィリピン向けなどは増加傾向にある。欧州委員会は、EU域内の豚肉価格の高騰は、輸出競争力を相対的に低下させており、22、23年ともに豚肉輸出量は減少する可能性があるとしている。
(調査情報部 上村 照子)