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海外需給動向【豚肉/ブラジル】畜産の情報 2023年1月号

22年の豚肉輸出量は4年ぶりに減少傾向で推移

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22年の豚肉生産量、堅調な国内需要を背景に増加傾向で推移
 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2022年1〜9月の豚肉生産量は388万トン(前年同期比5.7%増)と前年同期をやや上回った(図1)。これは、豚肉生産量の7割強を占める国内消費において、COVID-19の流行に伴う行動制限が行われた中で、低所得者層の消費者を中心に牛肉に比べて一層割安感が強まった豚肉が選ばれたことが背景にあるとされる。一方、同3割弱を占める輸出については、後述の通り21年後半から中国向けが減少したものの、その他の輸出先向けがその落ち込みの一部をカバーしたため、全体としては前年からやや減少傾向で推移している。
 

 
22年の生体豚価格は上昇傾向で推移
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、生体豚価格(パラナ州)は、豚肉生産量の増加や国内外の経済状況の悪化により2021年10月〜22年1月にかけて3割程度下落した(図2)。一方、インフレの進行に伴い飼料費、家畜輸送費などの生産コストが上昇した結果、独立系を中心とした中小規模の養豚農家では、その多くが経営難に陥った。このような状況に対応するため、最大の豚肉生産州であるサンタカタリーナ州では22年5月、州政府が養豚農家に対し融資に対する利子補給を行う支援を開始した。その後、価格は上昇基調で推移しており、22年10月時点で1キログラム当たり6.69レアル(177円:1レアル=26.42円(注))と前年同月並みにまで回復した。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「現地参考為替相場」の2022年11月末Selling相場。


22年1〜10月の豚肉輸出量、中国向けは前年同期比25.4%減
 ブラジル経済省貿易局(SECEX)によると、2022年1〜10月の豚肉輸出量は、83万6584トン(前年同期比3.3%減)と前年同期をやや下回った(図3)。同国の豚肉輸出量は、18年以降、中国向けを中心に大幅に増加してきたが、4年ぶりに減少傾向で推移している。
 輸出先別に見ると、最大の中国向けは、18年に同国で発生したアフリカ豚熱に伴う豚肉の減産分を補うため輸入需要が高まり、同国向け輸出は大幅な増加傾向で推移したが、21年後半になると同国で豚肉生産が回復して輸出量は減少に転じ、21年の輸出量は前年比2.6%増にとどまった。22年1〜10月は、豚肉需給の緩和が続き34万4959トン(同25.4%減)と大幅な減少となった。ただし、8月以降の同国向け月間輸出量は4万トン台と回復基調で推移している。中国、香港向けが減少する一方で、フィリピン向けは、国内のインフレ抑制対策として輸入関税の引き下げ措置が講じられたこともあって6万5952トン(同3.18倍)と大幅に増加した。このほか、シンガポール向けも4万7094トン(同22.3%増)となるなど中国以外のアジアや南米近隣国などへの輸出量が増加し、中国向けの落ち込みを一部補完した。この結果、同期間の輸出量に占める中国向けの割合は21年同期の53.5%から12.3ポイント低下し41.2%となった。


(調査情報部 井田 俊二)