22年1〜9月の鶏肉生産量、前年同期比2.1%増
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2022年1〜9月の鶏肉生産量は1114万トン(前年同期比2.1%増)と前年同期をわずかに上回った(図1)。生産量の約7割を占める国内消費はインフレによる消費者購買力の低下などにより減少しているものの、海外からの堅調な鶏肉需要が同国の鶏肉生産をけん引しているとみられる。
22年1〜10月の鶏肉輸出量、中国向けは前年同月を大幅に下回る
ブラジル経済省貿易局(SECEX)によると、2022年1〜10月の鶏肉輸出量は367万8258トン(前年同期比4.4%増)と前年同期をやや上回った(表)。米ドルに対するレアル安の為替相場に加え、アジア、EUおよび北米などで発生した高病原性鳥インフルエンザ、さらに、ウクライナ情勢の影響などにより多くの地域で動物性タンパク質の不足が生じたためとみられる。このような海外での鶏肉需給や、飼料、ヒナなど生産コストの上昇を反映して、輸出単価(米ドルベース)は前年同期比23.5%高と大幅に上昇した。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは45万3006トン(同17.4%減)と前年同期を大幅に下回った。これは、22年前半に鶏肉の取引価格が高く、また中国における保管冷蔵庫の一時的な閉鎖という状況下で、輸入業者の資金繰りに問題が生じ、同国向け輸出量が減少したためとみられる。アラブ首長国連邦向けは37万5493トン(同22.5%増)と大幅に増加し、日本を抜いて中国に次ぐ輸出先となった。同国では、輸入飼料などの生産コストの上昇や政府による鶏肉の価格統制により飼養羽数が減少する一方、経済成長や人口の増加を背景とした国内需要や鶏肉の再輸出先である近隣国の鶏肉需要が強いことなどが要因とされている。また、日本向けは34万5413トン(同3.1%減)と前年同期をやや下回った。さらに、サウジアラビア向けは29万182トン(同7.7%減)と前年同期をかなりの程度下回った。同国は21年5月、ブラジル産輸入鶏肉にサルモネラ汚染が確認されたとして11カ所の鶏肉処理場からの輸入を停止した。このほか、サウジアラビアは22年3月、18年ぶりにタイからの鶏肉輸入を再開しており、これらがブラジルからサウジアラビアへの鶏肉輸出に影響を及ぼしたとみられる。
鶏肉卸売価格は高水準の状況が継続
サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、ブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州、名目価格)は、堅調な需要を背景に2020年5月ごろから上昇傾向で推移し、21年9月中旬には統計が公表された04年以降で最高値となる1キログラム当たり8.57レアル(226円:1レアル=26.42円
(注))を記録した(図2)。その後は価格高騰により需要が減退し、21年10月以降、価格は下落傾向に転じた。しかし、22年2月以降は、ウクライナ情勢や米国での高病原性鳥インフルエンザの発生などによる供給量の減少に加え、不安定な飼料供給に起因する生産コストの上昇などを反映して価格は再び上昇した。直近の価格は同7.96レアル(210円、11月29日現在)で、22年7月以降、同8レアル(211円)前後の高水準の状況が続いている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年11月末のSelling相場。
(調査情報部 井田 俊二)