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海外需給動向【牛乳・乳製品/中国】畜産の情報 2023年1月号

生乳生産量の増加傾向、乳製品輸入量の減少傾向、ともに続く

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生乳生産量は引き続き増加
 中国国家統計局によると、2022年1〜9月期の生乳生産量は、前年同期比7.7%増の2709万トンとなった(図1)。
 中国農業農村部は、本年4月に公表した「中国農業展望報告(2022-31)」(注1)の中で、22年の生乳等生産量(注2)を3979万トン(前年比5.4%増)と予測していたが、(1)生乳のみで9月時点の生産量が2709万トンに達していること(2)同国の生乳生産量は通例10〜12月期にピークを迎えること―を考慮すると、22年の生乳等生産量は4月時点の予測を超える可能性が高まってきたとみられる(注3)

(注1)海外情報「中国農業展望報告(2022-2031)を発表(乳製品編)(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003277.html)を参照されたい。
(注2)牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなどの他品種由来の乳を含む生産量。
(注3)第3四半期(7〜9月)と第4四半期(10〜12月)の生乳生産量の比率(過去3年平均)から、本年第4四半期の生乳生産量を試算すると1284万トンとなり、通年で3993万トンとなる。したがって、これに他畜種由来の乳を加えた生乳等生産量は、予測量の3979万トンを超える可能性は高いと見込まれる。




生乳価格は引き続き高値推移も生産コスト増 
 生乳価格は、2021年8月以降緩やかな下落傾向にあったが、22年7月最終週の1キログラム当たり4.11元(81円:1元=19.73円(注4))を底にわずかに持ち直した(図2)。その後は横ばいで推移し、同年11月には同4.14元(82円)となった。今後の価格動向について現地関係者の間では、乳製品の需要期である冬場を迎えることから、今後大幅な下落はないとの見方が大勢を占めている。
 一方、現地専門家からは、飼料など生産コストの増加分を賄うには現在の価格水準でも十分とは言えず、中小牧場では牛を手放すような状況も見られるとの意見も聞かれた。

(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年11月末TTS相場。



 
乳製品輸入量は多くの品目で大幅減
 2022年1〜10月の主要乳製品輸入量は、バターおよび育児用調製粉乳を除く6品目で減少した(表)。
 昨今の輸入量減少について現地専門家からは、前年同期の輸入実績が大きかったこと、また、乳製品国際価格の高騰やCOVID-19に起因する需要低下など複数の要因が挙げられている。特に、中国の乳製品輸入の中で大きなウエイトを占める粉乳類(全粉乳および脱脂粉乳)の動向については、(1)国際相場の高騰から輸入意欲が低下していること(2)COVID-19に起因する需要低下で国内の生乳が過剰気味であるため、粉乳に仕向けられる生乳が増加し、輸入の必要性が薄れていること―が挙げられた。


(調査情報部 阿南 小有里)