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海外情報 畜産の情報 2023年1月号

米国豚肉産業と豚肉パッカーの現状と課題について

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調査情報部 小林 大祐

【要約】

 米国豚肉産業は、パッカーによる垂直統合の進展や、旺盛な輸出需要を背景に生産拡大が進められてきた。一方で、近年は豚の供給不足による価格上昇に加え、インフレによる牛や豚などの食肉需要低迷、労働者不足による工場稼働率の低下、中国需要の落ち着きによる輸出量の減少などが重なり、パッカーは利益減少に直面している。改善に向けて需要面、供給面双方での増加が望まれるものの、飼料価格をはじめとする生産コストの高騰や、規制リスクといった要因により生産者の増頭意欲は低下傾向にある。今後、パッカーが業績を改善できるかは、各課題への対応や、国内需要の喚起、輸出拡大の可否などが焦点になるだろう。

1 はじめに

 米国の豚肉産業は、米国農畜産物販売額の6.5%に相当する280億米ドル(3兆9163億円)の販売額(2021年)を記録する主要産業の一つであり、畜産業界の中では肉用牛、酪農、ブロイラーに次ぐ第4位の産業となっている(図1)。業界の成長には、パッカー(食肉処理加工業者)の大規模化や、垂直統合の進展による効率化が大きな役割を果たしてきた。一方で、大手パッカーの寡占化による生産者への価格交渉力の増大はたびたび問題視され、規制や政策による対応が検討、実施されてきた。ただし、生産者とパッカーをめぐる関係は、需給動向やその他の要因も影響するため、必ずしもパッカーが優位というわけではない。特に22年は供給のひっ迫や需要の減少といった要因が重なり、パッカーの経営は困難に直面しているとされる。本稿では、米国豚肉産業の構造や変化について確認した上で、近年の需給動向を概観し、業界が直面する課題や、今後の見通しについて報告する。
 なお、本稿中の為替レートは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2022年11月末TTS相場1米ドル=139.87円を使用した。

2 豚肉業界におけるパッカーの現状

(1)パッカー拡大の歴史

 1980年代後半、豚肉業界ではパッカーと生産者との販売契約や、パッカーの豚農場所有を通じた垂直統合が進み、養豚業は多数の小規模な事業者による経営から、少数の大規模な企業による経営へと業態が変化していった。この転換の背景には、肥育豚の体重が増加する秋冬の大規模処理に対応でき、生産者の経済的なリスク、特に設備投資へのリスクを抑えることができるといったメリットがあった。一方で、パッカーの寡占化に伴い、生産者に対する価格交渉力の増大が問題視されるようになった。米国農務省(USDA)はパッカーの寡占状況を監視しているほか、生産者とパッカーとの公正な取引を目的としたパッカー・ストックヤード法の改正案を継続的に議会に提案するなどして、大手パッカーへの規制強化を図ろうとしている。後項では、米国豚肉パッカーと生産者における家畜取引の形態や、パッカーの寡占化の状況を確認し、業界を取り巻く現状について考察する。

(2)家畜購入方法の変化

 豚肉パッカーの肥育豚購入方法は表1の通り分類され、豚肉などの市場価格を基に値決めする市場連動方式や、特定の条件を定めて契約を結ぶその他購入契約、パッカー所有の豚を導入するパッカー自己所有方式などが主流となっている。
 また、各購入方法の割合の推移は図2の通りである。このうち、パッカーからの購入および自己所有については2017〜21年にかけて変化が見られ、肉豚・豚肉市場方式と入れ替わるようにして割合が上昇している。この要因は、17年以降、旺盛な輸出需要に対応する食肉処理場(以下「処理場」という)の新設に伴い豚の供給がひっ迫し、パッカーが自己所有豚の割合を高めることで価格や供給をコントロールしようとしたことが背景にある。また、20年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大以降は、処理場の処理能力低下に伴い自己所有豚のと畜を優先させたことがある。このため、垂直統合が進展したというよりも、一時的な変化への対応との意味合いが強く、今後、肥育豚の供給と処理場の処理能力とのアンバランスが解消されれば、割合は元に戻っていく可能性がある。
 その他購入契約は、わずかながら割合が上昇している。この契約には、パッカーと生産者との取り決めによるプレミアムの支払いなどが含まれており、パッカーは供給の安定や求める品質の獲得、生産者はプレミアムや継続的取引が約束されるなど、双方がメリットを享受できる仕組みとなっている。このことから割合が上昇していると考えられる。
 一方で、スポット取引は割合が低下している。スポット取引は、一般的にパッカーが価格交渉力を持ちやすいとされるほか、需給による価格変動の影響を受けやすい特徴があり、他の取引に代替されていると考えられる(注1)

(注1)スポット取引自体は全体の数%であるが、4割近くを占める市場連動方式のベンチマークとしてスポット取引の価格が組み込まれることが多く、市場連動方式の価格形成にも影響を与える点に留意されたい。
 




 

(3)寡占化の状況

 食肉・食鳥パッカーの寡占状況は、USDAのパッカー・家畜市場局(PS&D)により監視されている。同局は、法令により食肉・食鳥産業における市場の競争性、公正性を確保する独自の任務を負っており、業界の集中度を示す指標として、上位4社集中率(CR4)を公表している。この指標によると、2020年の豚肉パッカー業界のCR4は64%となっており、牛肉の81%と、ブロイラーの53%の中間に位置する数値となっている(図3)。

 
 こうした業界による集中率の違いは、パッカーと生産者の関係の違いを反映している。パッカーの収益性確保には、安定して一定の家畜を確保し、稼働率を高める必要がある。しかし、自己所有や長期販売契約による家畜の安定確保を行わない場合には、大規模化により購買力を高め、供給をコントロールする必要がある。このため、パッカーによる家畜所有が少なく長期販売契約の割合が相対的に低い牛肉業界では、大規模化が進みCR4が高くなっている。これに対し、パッカーと生産者との契約による生産がほとんどとなっている鶏肉業界ではCR4は低い。豚肉業界は両者の中間的な実態にあり、CR4も中間となっている。
 また、豚肉パッカーのCR4は、18年をピークに低下し、10年前後の水準に戻っている。これは、17〜18年にかけて輸出需要が拡大する中で、シーボード・フーズやトライアンフ・フーズといった、大手ではあるが上位4位に入らないパッカーが、需要増に対応するため新たな処理場を相次いで開設したことで、上位4社の割合が低下したためである。
表2は20年における大手豚肉パッカーの1日当たりの推定処理能力(頭数)であるが、上位3社のスミスフィールド・フーズ、JBS、タイソン・フーズだけでも全体の約6割を占めているほか、上位10社では8割以上となっていることが分かる。

コラム 繁殖豚飼養頭数上位10者の飼養頭数割合

 豚肉処理部門における上位4社への集中率は、10年以上にわたってそれほど変化していなかった。では、生産部門はどうだろうか。生産者が所有する繁殖豚飼養頭数上位10者の飼養頭数割合について、2015年と21年を比較すると、ほとんど変化していないことが分かる(コラム−表1)。

 
 理由としては、生産量増加の手段として、繁殖豚を増加させるのではなく、産子数や枝肉重量の増加を選択していることが挙げられる。これは、米国において繁殖豚飼養頭数がほぼ横ばいであるにもかかわらず、生産量が年々増加していることからも確認できる(コラム−図)。また、USDAが17年まで公表していたデータによれば、大規模生産者ほど1腹当たりの平均産子数が多くなり、より効率的に豚肉生産を行っている傾向にある(コラム−表2)。このため、繁殖豚飼養頭数はほとんど増えていない一方で、生産量については上位生産者への集中が進んでいると推測される。
 また、上位10者のうち、スミスフィールド・フーズ、シーボード・フーズ、JBS、アイオワセレクトファームズは、パッカーの生産部門またはパッカーと直接取引を行う生産者である。一方、パイプストーン・マネジメントやカッセージシステム、AMVCマネジメントサービスは、獣医療サービスや栄養管理、施設管理・メンテナンスといったサービスを生産者に提供する一環として、繁殖豚を飼養している。



3 米国豚肉の需給動向

 ここ数年の米国の豚肉需給動向は、表3の通りである。直近の変化をパッカーの視点から見ると、2017年以降、輸出需要に後押しされる形で生産量が拡大し、加工場の処理能力向上が進められていたが、20年にはCOVID-19の拡大に伴い、処理場の閉鎖や生産体制の混乱といった困難に見舞われた。21年はこうした混乱から徐々に落ち着きを取り戻していったが、22年には飼料穀物価格の上昇など生産コストの増加による豚の供給減、インフレやドル高に伴う国内外の需要減、卸売価格の低下といった課題が発生し、パッカーは新たな困難に直面している。後項では、供給面と需要面とに分けて、直近の動向および今後の見通しについて述べる。

 

(1)供給の減少と増頭意欲の低下

 米国の豚総飼養頭数の推移を見ると、2017〜20年にかけては増頭傾向だったものの、20年以降は縮小傾向にある(図4)。また、肥育豚価格は20年以降上昇しており、本来であれば供給増の好材料になるところであるが、USDAが22年9月に公表したデータによると、繁殖豚飼養頭数、肥育豚飼養頭数、6〜8月の産子数がすべて減少し、生産者の9〜11月と12月〜翌2月の分娩母豚数見込みもすべて減少している(表4)。これは、飼料価格や、豚舎の空調などに使用するエネルギーコストの高騰、カリフォルニア州法などの規制リスク(後述)、国内外の需要減速などにより今後の見通しが不透明なことなどにより、生産者が増頭に慎重となっているためである。USDAは23年の豚肉生産量を前年比0.8%増と予測しているが、規制リスクの見通しがつき、肥育豚価格がさらに上がるまでは増産は行われないと見込まれ、豚群の拡大は23年の後半になるとみられている。




 

 (2)国内需要の減速とパッカーの粗利益の減少

 表3によると、2020〜21年にかけて国内消費量はわずかに減少しており、22年の数値は未公表であるものの、個人消費量見込みは横ばいとなっている。これは、食品価格全体がインフレにより上昇する中で、牛肉や豚肉から鶏肉へと消費が移行したためである。また、国内需要、輸出の減少により冷凍在庫が増加しており(図5)、卸売価格も低下している。なお、21年の小売価格の上昇は主に需要の高まりによって引き起こされたのに対し、22年の価格の上昇は、生産コストの上昇や労働者不足によってもたらされているという要因の違いがある。
 図6は小売価格に占める小売、パッカー、生産者のそれぞれの粗利益の割合を示したものである。20年には肥育豚価格の下落により生産者の割合が低下した一方、小売店の割合は高くなっていた。しかし、22年には肥育豚価格の高騰が小売価格を押し上げたため、生産者の割合が高くなり、小売店およびパッカーの割合は低下している。
 なお、図6ではコスト変動は加味されていないことに留意されたい。生産者は飼料価格やエネルギーコスト、パッカーは人件費、エネルギーコスト、金利上昇に伴う資本コスト、小売業者は輸送費や人件費がそれぞれ上昇しているため、こうしたコストを差し引いた後の経常利益はさらに圧迫されていると想定される。専門家からの聞き取りによれば、23年に最も経常利益を上げると見込まれるのは生産者で、逆に最も少なくなるのはパッカーと見込まれている。



 
 また、図7は豚1頭当たりのパッカーの粗利益を算出したもの(注2)であるが、20年にはCOVID-19の拡大に伴う肥育豚の価格下落と卸売価格の上昇により一時的に高水準となった。一方、22年(1〜10月)は、肥育豚の供給ひっ迫に伴う価格の上昇と卸売価格の下落により半分以下となっている。
 今後の見通しとして、23年の秋以降に肥育豚の供給増の期待から肥育豚価格が下がるため、季節的要因により現在よりは改善すると見込まれる。また、USDAは23年の1人当たり牛肉消費量を前年比5.6%減、豚肉消費量を同1.4%増、ブロイラー消費量を同1.8%増と見込んでいる。これはインフレによる牛肉消費の減少により、豚肉の消費が代替的に拡大する想定と考えられるが、需要増が卸売価格上昇につながれば、パッカーにとって好材料となる。

(注2)図7の粗利益はスポット取引価格を基準として算定されているが、スポット取引価格は、豚の需給が緩めば価格は割引に、需給が強まれば価格は割高になる傾向があるため、他の取引形態と比べ、変動が強調される点に注意されたい。
 
 

(3)輸出需要の減速

 図8、9は、ここ数年の輸出量・輸出額の推移を輸出先別に示したものである。輸出量が生産量の2割強を占める中、2021年以降、輸出量は減少傾向となっている。これは、ドル高や中国向け需要の落ち着きに加え、物流の停滞に伴う貨物遅延により、賞味期限の比較的短い冷蔵豚肉の輸出量が減少したことなどが影響している。




 
 主要輸出先のうち、特に輸出量の変動が大きいのはメキシコと中国向けである。まず、メキシコ向けについては、15年以降、20年を除いたすべての年で輸出先第1位となっており、22年(1〜9月実績)も前年同期比18.3%増と好調に推移している。特に22年は、為替がペソ高で推移していること、かつ、国内生産量の伸びを上回る豚肉消費の拡大など輸出を後押しする要因が多く、今後も主要な輸出先となると見込まれる。
 一方で、中国向けは20年をピークに減少傾向にある。従来、中国はバラエティミートの主要市場であったが、アフリカ豚熱により中国の豚肉生産量が劇的に減少したことで、部分肉や枝肉を大量に輸入するようになった。しかし、豚肉生産の回復などから22年現在、バラエティミート中心の輸入に戻りつつある。また、22年の輸出減速の背景には、ゼロコロナ政策による検査などの中国側の輸入コスト増加や、報復関税により他国産に振り替えられているという事情もある。今後、ゼロコロナ政策や、報復関税の動向によっては、再び同国向けの輸出が拡大する可能性もある。
 3で述べたほかにも、米国の豚肉パッカーはさまざまな課題に直面している。以下では、(1)パッカー・ストックヤード法(2)カリフォルニア州法12号(3)加工場における労働力不足―の3点について、その概要と今後の見通しを紹介する。

4 米国豚肉パッカー業界における課題

(1)パッカー・ストックヤード法

 パッカー・ストックヤード法は、食肉パッカーの寡占化が進む中でパッカーの生産者に対する価格交渉力の増大が問題視されたことから、1921年に制定された法律である。同法では、市場競争を阻害する不公正な家畜取引や価格形成の禁止、生産者への迅速な支払いの義務付けなどが定められている。
 2021年6月、USDAはパッカー・ストックヤード法(注3)の執行強化を目的として、(@)新たな「家きん生産者トーナメントシステム」による鶏肉処理に対する抑圧的な価格決定に係る慣行の排除(A)畜産農家に対する不公正で欺瞞ぎまん的な行為、不当な優遇、不当な偏見といった同法における違反行為の明確化(B)同法に基づき訴訟を起こす際、訴訟当事者が競争に害を及ぼすことを証明する必要がないことの明確化―という三つの新たな規則の制定を発表した。この内容は、10年から16年にかけて提案されたものの、業界や議会の強い反発に遭い、実現しなかった規則の再提案となっている。
 このうち、特に影響が大きいのは(B)であり、パッカーは訴訟を避けるため、生産者にプレミアムを支払う契約(その他購入契約)の割合を減らすか、自己所有豚の割合を増やす可能性がある。同規制案はまだ議会に提出されていないものの、22年末には提出されるとの見方もあり、今後の動向を注視する必要がある。

(注3)海外情報「食肉・食鳥処理の新規参入促進に向けて5億米ドルの支援を発表(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003004.html)を参照されたい。
 

(2)カリフォルニア州法12号

 2018年11月、カリフォルニア州では子牛、母豚、採卵鶏の飼養基準を定め、同基準を満たさない畜産物の販売を禁止する州法第12号(注4)が可決された。生産者は同法に準拠するために新しい畜舎などが必要となるほか、パッカーは基準に対応した情報などを管理するため新たにトレーサビリティを構築する必要が生じ、それぞれに追加コストがかかる。業界団体によれば、州法への対応に要する費用は1頭当たり3500米ドル(48万9545円)にも及ぶと試算されており、食肉価格に転嫁される可能性がある。また、同州は米国内の豚肉消費量の約15%を占め、その99%以上は州外で生産されているため、州外の豚肉生産に与える影響が大きい。22年12月現在、州法のうち、母豚の飼養基準と豚肉の販売に係る規定については、裁判所の命令を受け一時的に施行停止となっているが、業界最大手のスミスフィールド・フーズが22年6月、操業コストの高騰を理由に同州のバーノン工場を23年初頭に閉鎖することを発表したほか、生産者からも増頭を見送る声が聞かれるなど、州法の影響はすでに出始めている。
 なお、同法は21年9月に全米豚肉生産者協議会(NPPC)とアメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)が「州法12号は州際通商(州間商取引)条項に違反する」として、施行停止を求め連邦裁判所へ提訴、22年10月に口頭弁論が開催、23年2月ごろには判決が下される見通しとなっており、判決の行方は米国での豚肉生産に大きく影響すると見込まれている。また、マサチューセッツ州でも同様の州法3号があり、カリフォルニア州法12号の動向により施行が左右されるとしているため、併せて動向が注目される。

(注4)海外情報「母豚飼養基準などに関するカリフォルニア州法を巡る裁判、口頭弁論を開催(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003383.html)を参照されたい。

(3)処理場における労働力不足

 パッカー業界では以前から労働力不足が課題とされており、COVID-19のまん延(パンデミック)に端を発する離職率の増加などにより拍車がかかっている。パンデミック以前の操業率は90〜95%で推移していたのに対し、22年の操業率は80〜85%程度と言われている。このため、業界団体や政府は、研修の実施や福利厚生の向上などによる労働者確保の取り組みに力を入れ始めている(注5)
 また、一部パッカーは機械化やロボット導入の検討を進めている。これまで、食肉処理分野では、枝肉の大きさや肉質などの均一性が低いこと、X線や人工知能など高度な技術を要する場合、導入費用が高価となることなどから、機械化の検討は遅れていた。しかし、枝肉を半分にカットする工程など、技能をあまり必要としない基本的な処理や、ベルトコンベアーでの工場内の製品移動、パレットの積み上げや移動、箱の組み立てや包装といった、食肉処理以外の部分で徐々に機械化が進んでいる。こうした機械化の導入は、既存の工場よりも新規工場の建設時の方がより進みやすいと考えられる。一方で、脱骨、トリミング(整形)などの工程は、枝肉の特徴を熟知した熟練労働者が必要なため、上述の作業に比べ、代替は困難となっている。将来的には、機械と労働者が共存する形になっていくと考えられる。

(注5)『畜産の情報』 2022年12月号 海外情報「米国食肉・食鳥業界における労働力不足の現状と対応について」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002495.html)を参照されたい。

5  おわりに

 USDAは、2022年11月時点で23年の豚肉生産量を前年比0.8%増、輸出量を同1.0%減と予測している。しかし、現時点では、豚の供給不足により肥育豚価格が上昇する中で、インフレによる牛・豚の食肉需要の低迷や卸売価格の下落、輸出量の減少などにより、パッカーの経営は困難な状況に直面している。また、肥育豚価格が高値にもかかわらず、生産コストの上昇や規制リスクにより、生産者の増頭意欲は低下傾向にある。
 こうした要因を考慮すると、引き続き肥育豚価格は高止まりし、豚肉生産は23年の第2(4〜6月)〜第3四半期(7〜9月)の間は、拡大する可能性は低いと思われる。パッカーが利益を改善する方法としては、機械化や労働力確保によりオペレーションコストを削減することや、契約形態の工夫などにより安定的に豚の供給を確保していくこと、消費者ニーズを捉えた、高い利益率で販売できる新製品を開発し、国内需要を喚起すること、米国では割安であるが、中国など海外では需要が高いバラエティミートを輸出し、枝肉に付加価値を付けることなどが考えられるだろう。