農林水産省の作物統計によると、2021年度のかんしょの作付面積は約3万2400ヘクタール、生産量は約67万1900トンである。都道府県別生産量では鹿児島県が第1位の19万600トン、宮崎県が第4位の7万1000トンであり、近年、サツマイモ
基腐病の被害を受けているものの、鹿児島県と宮崎県を合わせた南九州地域は依然として全国生産量の約40%を占めるかんしょの大産地である。
かんしょには出荷基準があり、規格外は商品とならないため
圃場で廃棄される。例えば、南九州でのかんしょの主用途である焼酎用、でん粉用では重量による基準があり、かんしょ1個が50グラムに満たない小さいサイズは「規格外かんしょ」となる(写真1)。ここではこの基準にならい、50グラム未満のサイズを規格外かんしょと定義して、南九州地域で飼料として利用できる可能性のある規格外かんしょの発生量を試算した。
かんしょは苗を植える「挿苗栽培」が慣行であるが、育苗から採苗・定植までの作業負担が大きいため、省力化を目的として、ばれいしょのように種いもを直接圃場に植え付ける「直播栽培」が研究されている(境垣内ら 2020)(写真2)。今後、挿苗栽培の一部を直播栽培に転換することを目指しており、直播栽培での規格外かんしょの発生量についても調査を行った。
調査は2021年に国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター都城研究拠点(宮崎県都城市)の圃場で実施した。挿苗栽培では、焼酎・でん粉用の主要品種である「コガネセンガン」「シロユタカ」、青果用の主要品種である「べにはるか」を供試し、4月下旬に苗を植え付けた。直播栽培では直播栽培適性のある3品種・系統を供試し、3月下旬に種いもを植え付けた。なお、直播適性のある品種・系統とは、植え付け後、親いも(種いも)が肥大しないように改良された品種・系統である。収穫調査は挿苗区、直播区ともに10月下旬に行い、茎葉を除去した後、収穫機械で畦内のかんしょを掘り出した。掘り出したかんしょのうち、50グラム以上を出荷可能な「規格内かんしょ」、また、50グラム未満は「規格外かんしょ」として分類し、収量(生重量)の調査を行った。
慣行の挿苗栽培した3品種では、規格外かんしょの割合は全体の1.64〜3.20%の範囲にあった(表1)。3品種の平均値から2%を挿苗栽培の規格外かんしょ割合と仮定すると、鹿児島県、宮崎県のかんしょ生産量が19万600トン、7万1000トンであることから、圃場で廃棄されている規格外かんしょは鹿児島県で3812トン、宮崎県で1420トンと試算され、南九州において、5000トンを超える
賦存量(潜在的な存在量)があることが分かった。
写真2のように直播栽培では、1株当たりのいも数が多くなる。このため、直播栽培では規格外かんしょの割合も挿苗栽培と比較すると大きく、5.09〜8.59%の範囲にあった。直播適性品種・系統の規格内かんしょ重は、挿苗栽培した品種と同程度以上であることから、直播栽培が挿苗栽培の一部を代替した場合には、現状よりも多くの規格外かんしょが発生すると推察される。