肉牛取引価格は上昇傾向に反転
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年11月半ばころから急激な下落傾向にあったものの、同年12月7日時点の1キログラム当たり855豪セント(783円:1豪ドル=91.57円
(注))を底に上昇傾向に転じている(図)。22年最後の取引となる12月15日は、同901豪セント(825円)と、21年末の終値である1160豪セント(1062円)からは22.3%低い水準となったが、過去5カ年平均からは3割程度高い水準となっている。
現地報道によると、12月上旬までの下落傾向は、牧草が潤沢にあるものの、フィードロットや食肉処理施設における収益性の低さを背景とした需要減によるものであるとしている。特にフィードロットでは、穀物価格の高騰や長雨による牛の肥育不良に加え、高値にある肉牛価格により入手が困難なことも要因に挙げられている。また、クリスマスの需要期を前に、価格は年末に上昇傾向に反転し、年明けにはさらに上昇する見込みとしている。一方で、生産コストの上昇やインフレ下での消費動向、世界的な牛肉輸出市場の
趨勢などが、肉牛購買者の不安材料となっているとしている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年12月末TTS相場。
牛肉輸出量、日本向けは減少も米国向けが増加
豪州農林水産省(DAFF)によると、2022年11月の牛肉輸出量は6万9697トン(前年同月比7.9%減)とかなりの程度減少した(表)。
輸出先別に見ると、日本向けは1万7267トン(同14.7%減)とかなり大きく、韓国向けも1万3302トン(同27.1%減)と大幅に減少しているが、米国向けは9383トン(同13.7%増)、東南アジア向けは7885トン(同16.1%増)と増加している。
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、今後少なくとも1年間は、豪州産牛肉輸出にとっては好機としており、その理由として、米国での干ばつによる牛群
淘汰が進むことで飼養頭数が低水準となり、将来的には牛肉生産量が大幅に減少する見込みであることを挙げている。また、豪州はインドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムなどの東南アジア諸国に、年間約27億豪ドル(2472億円)の赤身肉を輸出しているが、当該地域の今後の富裕層拡大により、主要たんぱく源が、魚や鶏肉から赤身肉へ移行することが見込まれるほか、観光業などではCOVID-19からの回復により、赤身肉需要が高まっていくとしている。
(調査情報部 国際調査グループ)