22年の牛肉生産量、前年比6.2%増の見込み
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2022年のブラジルの牛肉生産量は1035万トン(前年比6.2%増)とかなりの程度増加し、3年ぶりに増加に転じると見込まれている(図1)。また、23年は1045万トン(同1.0%増)と2年連続での増加が予測されている。これは、同国における牛と畜対象頭数が増加する中で、22年の牛肉国際価格が高水準で推移していることや、これを受けて生産者が飼育期間を延長し、平均と畜重量が増加していることなどが要因とみられる。
同国では、18〜19年にかけて旺盛な牛肉需要に対応するため多くの雌牛がと畜に回されたが、その後、生産者が牛を保留し牛群再構築の方向に転換した。この結果、20〜21年のと畜対象頭数は減少していた。
22年1〜11月牛肉輸出量、前年同期比28.3%増
ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2022年1〜11月の牛肉輸出量は183万8664トン(前年同期比28.3%増)と前年同期を大幅に上回った(図2)。これは、21年9月にブラジルで非定型BSEに感染した個体が確認されたことで主要な輸出先である中国などにより講じられた輸出制限措置のため、同年10〜12月の輸出量が大きく落ち込んだ後、制限が解除され輸出が回復したためである。
22年1〜11月の牛肉輸出量を輸出先別に見ると、中国向けは113万9274トン(同59.0%増)と大幅に増加し、輸出量全体の62%を占めた。同国向けは、輸出制限措置がとられた21年12月15日までの約3カ月間、輸出量が落ち込んだが、22年2月以降は前年同月を上回る輸出量となった。エジプト向けは8万2509トン(同74.0%増)と大幅に増加し、チリや米国を抜いて中国に次ぐ輸出先となった。同国向けは18年以降、価格上昇などにより減少傾向で推移していたが、ハラール牛肉需要の高まりなどを背景に再び増加している。また、20年2月に輸出が再開された米国向けは7万8810トン(同29.8%増)と大幅に増加した。
22年肥育牛価格、需給緩和に伴い下落傾向で推移
サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2022年の肥育牛価格は、21年9月の牛肉輸出制限の影響による大幅な下落後、海外からの堅調な需要、また、飼料費など生産コストの上昇やインフレの進行などを背景に急速に上昇し、22年3月には1キログラム当たり23レアル(589円:1レアル=25.62円
(注))台に達した(図3)。しかし、その後は、と畜頭数や平均と畜重量の増加により牛肉需給が緩和したことで下落傾向に転じ、22年11月には同18レアル(461円)程度まで下落した。22年12月22日時点の価格は、同19.81レアル(508円)となっている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2022年12月末Selling相場。
(調査情報部 井田 俊二)