繁殖豚飼養頭数、前年同月比0.5%増
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2022年12月1日時点の豚飼養頭数は7311万9000頭(前年同月比1.8%減)とわずかに減少した(表1)。内訳を見ると、肥育豚は6696万6000頭( 同2.0%減)とわずかに減少したが、繁殖豚は615万4000頭(同0.5%増)とわずかに増加した。現地報道によると、肥育豚価格が堅調に推移する中、生産者の飼料コスト高騰に対する懸念が和らいだことで、繁殖豚飼養頭数の増加にもつながったとされている。また、9 〜 11月期の分娩母豚頭数および産子数は減少したものの、1頭当たりの産子数は11.22頭と前年並みとなった。
肥育豚価格は供給減により大幅に上昇
2022年11月の豚肉生産量は、同月のと畜頭数減少などにより106万6000トン(前年同月比2.4%減)とわずかに減少した。これを受け、肥育豚価格は100ポンド当たり63.7米ドル(1キログラム当たり188円(注):1米ドル=133.70円、同16.9%高)と前年同月比では大幅に上昇した(図)。一方、22年11月の豚肉卸売価格は、100ポンド当たり93.4米ドル(1キログラム当たり275円、同2.7%高)とやや上昇した。USDAによると、高病原性鳥インフルエンザの影響により七面鳥の供給量が減少する中、代替的に豚モモ肉の需要が増加したことが、豚の供給量減少と併せて卸売価格を下支えしたとされている。
(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年12月末TTS相場。
22年10月の豚肉輸出量、アジア市場向けが大幅に増加
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2022年10月の豚肉輸出量は24万4800トン(前年同月比0.1%増)と前年並みで推移した。一方、22年1 〜 10月の累計の豚肉輸出量は235万7900トン(前年同期比12.1%減)とかなり大きく減少した(表2)。
10月の輸出量を主要輸出先別に見ると、中国・香港向けは中国国内の豚肉価格が高騰していた中で2万8100トン(前年同月比21.2%増)、韓国向けは17700トン(同30.1%増)といずれも大幅に増加した。一方、メキシコ向けは9万1900トン(同0.5%減)、日本向けは円安の影響もあり3万8600トン(同1.7%減)とわずかに減少した。
こうした状況について米国食肉輸出連合会(USMEF)のホルストロム会長は、「中国への輸出増に加え、輸出先の多様化も効果を上げている。また、食肉処理場における労働状況の改善も出荷増に貢献した」と、輸出回復の要因について語った。一方USDAは、米ドル高や豚肉価格の高止まり、他の輸出国との競合が輸出の足かせとなる可能性が高いとし、22年第4四半期の輸出量見込みを3万4000トン引き下げ、76万トンとした。
(調査情報部 小林 大祐)