豚肉生産量は引き続き前年同月比減
欧州委員会によると、2022年9月の豚肉生産量(EU27カ国)は、175万3250トン(前年同月比9.3%減)とかなりの程度減少した(図1)。同月のと畜頭数は1909万頭(同8.7%減)と減少し、また、1頭当たり枝肉重量も91.8キログラム(同0.6%減)と減少した。
同月の生産量は、スペイン(同9.3%減)、ドイツ(同10.4%減)、フランス(同4.4%減)の上位3カ国をはじめすべての主要生産国で前年同月を下回った(表1)。欧州委員会の中期見通しによると、22年以降は中国の豚肉生産能力の回復をはじめとする輸出機会の減少やEU主要生産国におけるアフリカ豚熱の継続した発生、厳しい環境規制などの要因によりEUの豚肉生産量は減少傾向で推移すると見込んでいる。
卸売価格は2カ月連続で前月比安
欧州委員会によると、2022年11月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比54.3%高の100キログラム当たり198.57ユーロ(2万8390円:1ユーロ=142.97円
(注))となった(図2)。同価格は2カ月連続で前月を下回ったものの、引き続き前年同月を大幅に上回っている。欧州委員会の見通しによると、同価格は22年の高騰後、中国向け輸出量の継続した減少が見込まれることで25年までに徐々に下落し、その後、32年までは同150ユーロ(2万1446円)前後で推移すると予測されている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年12月末TTS相場。
22年9月の輸出量、中国向けの減少から前年同月比減
欧州委員会によると、2022年9月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、24万7050トン(前年同月比5.7%減)と前年同月をやや下回った(表2)。主要輸出先別に見ると、中国向け(同6.2%減)、英国向け(同11.3%減)および韓国向け(同24.3%減)が前年同月を下回った。これら3カ国でEU域外豚肉輸出量の半数を占めており、輸出量減少の要因となっている。また、中国向け輸出量の減少は今後も継続すると見込まれている。一方で、アフリカ豚熱により国内生産量が減少しているフィリピン向けの輸出量(同52.9%増)は大幅に増加している。フィリピン政府は、消費者への適正な価格での豚肉の供給を確保するために輸入税率の引き下げを23年末まで延長するとしており、同国向け輸出の伸びが期待されている。
(調査情報部 渡辺 淳一)