22年1〜10月の鶏肉生産量は、前年比微増
タイ農業協同組合省農業経済局によると、2022年1〜10月の鶏肉生産量は200万7402トン(前年同期比1.0%増)となった(図1)。昨年末に発生したアフリカ豚熱発生の影響
(注1)による鶏肉への代替需要や、コロナ禍からの脱却に伴う消費回復などにより前年をわずかに上回った。また、同国内では、COVID-19に起因した労働者不足も解消したことで、鶏肉生産体制は復旧したとされており、来年の鶏肉供給量は十分に確保されるものと見込まれている。
(注1)海外情報「2022年の豚総出荷頭数、アフリカ豚熱などの影響で減少見込み(タイ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003182.html)を参照されたい。
22年の国内の鶏肉卸売価格は下落に転じる
2022年11月の鶏肉卸売価格は、1キログラム当たり58.5バーツ(227円:1バーツ=3.88円
(注2))となり、依然として高値で推移しているものの、10月以降は下落している(図2)。タイでは、アフリカ豚熱の影響が残る豚肉生産量の減少に起因した鶏肉代替需要や、コロナ禍からの経済回復による世界的な鶏肉需要の増加など、国内外で高まる需要に応えるため、大手養鶏・鶏肉生産企業は増産に取り組んできた。現地関係者からは、10月以降の価格が下落基調の中でも生産調整の動きが見られず、飼料価格高騰などにより生産コストが膨らむ中で、高水準にある鶏肉価格の急落を危惧する意見も出てきている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年12月末TTS相場。
22年1〜10月の冷凍鶏肉輸出量は引き続き減少が続くも10月単月では増加
2022年1〜10月の冷凍鶏肉の輸出量は、28万5228トン(前年同期比9.1%減)と前年をかなりの程度下回ったものの、10月単月では3万2015トン(前年同月比10.0%増)と前年をかなりの程度上回っている(表1)。主要輸出先別に見ると、日本や中国向けが大幅に前年を下回っている。現状、為替の影響などによる主要輸出先の購買力や倉庫の受け入れ余力の低下などが輸出を抑制する要因となっており、また、年末需要の一服などから、輸出需要のさらなる低下も見込まれる状況にある。
22年1〜10月の鶏肉調製品輸出量は引き続き大幅に増加
2022年1〜10月の鶏肉調製品輸出量は、55万4848トン(前年同期比24.2%増)と前年を大幅に上回った(表2)。現地関係者によると、現在、主要輸出先である日本向けは来春に向けた新商品開発が進み、また、為替の影響を受ける中で、加熱済み調製品よりも比較的安価な味付け済み鶏肉などの未加熱調製品の需要が高いとされている。
(調査情報部 海老沼 一出)