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海外需給動向【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2023年2月号

生乳取引価格の記録的高騰は続くものの、伸び率鈍化

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バターの価格下落が顕著
 欧州委員会によると、直近の2022年12月18日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり595ユーロ(8万5067円:1ユーロ=142.97円(注))、脱脂粉乳が296ユーロ(4万2319円)、全粉乳が419ユーロ(5万9904円)となり、いずれも下落傾向が続いている(図1)。特にバターは、高水準の価格にあるものの、同年10月以降は急速に下落している。現地情報によると、主要輸出先である中国の全粉乳需要が減退したことで、生乳が脱脂粉乳およびバターに仕向けられ、これらの生産量の増加が価格の下落につながったとしている。一方で、チーズは安定した需要により、価格は高水準を維持している。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年12月末TTS相場。

 
生乳取引価格は依然過去最高値を更新
 欧州委員会によると、2022年11月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり57.30ユーロ(8192円、前年同月比43.1%高)と依然として最高値を更新し続けている(図2)。しかし、バターや脱脂粉乳などの乳製品価格が下落していることから、前月比では1.2%高となり、9月および10月の同4.0%前後の伸び率から鈍化している。

 
乳価の高騰と好天により生乳の生産量は増加
 欧州委員会によると、2022年10月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1170万840トンとなった(図3、表)。主要生産国で乳用牛飼養頭数が減少している中で、前年同月比1.7%増とわずかな上昇ではあるものの、21年6月以降最大の増加率となった。現地情報によると、記録的な乳価の高騰に加え、欧州の多くの地域で続いた好天により放牧環境が良好となったことで、生産者が経産牛の淘汰とうたを遅らせたなどの一時的な要因が大きいとしている。
 同月の出荷量を国別に見ると、主要国上位のドイツ(同2.3%増)、フランス(同1.3%増)、オランダ(同4.8%増)、ポーランド(同2.5%増)、アイルランド(同7.5%増)がいずれも増加した。
 



 
(調査情報部 上村 照子)