令和5年1月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり280円(前年同月差129円高)となり、前月の284円からは低下したものの、5カ月連続で前年同月を上回った(図1)。
例年、年末年始にかかる加工業者や量販店の休業などにより産地に滞留した鶏卵が年明けの営業再開に伴い一斉に流通するため、年初の鶏卵相場の始値は下落する。5年の始値も4年12月の終値(同300円)より40円安の同260円となったが、その後、再び上昇傾向となり1月末の終値は同305円となった。
月平均価格の対前年同月比でも、11月は126.6%、12月は135.2%、1月は185.4%と高値水準が続いている。また、過去5カ年の1月平均149円に対して、本年1月の卸売価格は131円高(+88.4%)となった。
昨年から引き続き、業務用需要が回復傾向にあることや、生産コストの上昇などから卸売価格が例年より高水準で続いていること、加えて年末の需要期や高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)の発生などが重なった影響と見られる。
今後について、供給面では、全国的に発生しているHPAIの影響が懸念される。また、需要面は、全国旅行支援期間の延長や、寒さが落ち着き始め、人流の活発化などによる外食需要の回復が期待されることに加え、例年より高値での推移が続く中、これから価格上昇に向かうシーズンとなることから、今後の動向が注目される。
鶏卵小売価格、21カ月連続で前年同月を上回る
鶏卵の小売価格は、その消費量のほとんどが国内生産で賄われていることから、国産鶏卵の卸売価格の影響を受ける傾向がある。
鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、生産コストの上昇による価格転嫁などにより高水準で推移したまま年末の需要期を迎えた中、HPAIの影響も加わり、例年に比べて非常に高い水準で推移している。
小売価格(東京都区部)の推移を見ると、1月は1パック当たり246円(前年同月差12円高)となり、前月の同249円からは3円下げたものの、21カ月連続で前年同月を上回った(図2)。なお、過去5カ年の1月の平均価格と比べても19円高い水準となっており、高止まり傾向が続いている。
昨年からさまざまな商品の物価が値上がりし、消費者の節約志向がさらに高まることなどが予想される中、鶏卵の消費動向にもどのような影響が出るか注視する必要がある。
(畜産振興部 生駒 千賀子)