牛肉生産量、前年同月比3.8%減
欧州委員会によると、2022年10月の牛肉生産量(EU27カ国)は55万5080トン(前年同月比3.8%減)と前年同月をやや下回った(図)。同月のと畜頭数は189万9830頭(同3.7%減)と減少し、1頭当たり枝肉重量は292.2キログラム(同0.1%減)と前年並みとなった。加盟国別の牛肉生産量を見ると、アイルランド(同3.6%増)を除きすべての主要生産国で前年同月を下回った(表1)。同委員会によると、牛群に占める肉専用種の割合は増加傾向で推移しているものの、有機畜産や粗放的な生産体系への移行、また1人当たり牛肉消費量の減少などにより、EUの牛肉生産量は減少傾向で推移すると見込んでいる。
22年12月の牛枝肉平均卸売価格
(注1)は、100キログラム当たり509.64ユーロ(7万2909円、1ユーロ:143.06円
(注2)、同18.5%高)と21年3月以降、引き続き前年同月を上回って推移している。価格の上昇について同委員会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により減退していた外食需要などが回復しつつあることに加え、供給量が世界的に低迷していることを要因としている。
(注1)若雄牛(A)、去勢牛(C)および若齢牛(Z)のうち枝肉の格付けが上(R)、枝肉の脂肪の付着度合が平均的(5段階中3)なものの平均価格(A/C/Z-R3)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年1月末TTS相場。
英国への牛肉輸出量は大幅に増加
2022年1〜10月の冷蔵および冷凍牛肉輸出量は、前年同期比3.8%減の36万5796トンとやや減少した(表2)。これは、冷蔵牛肉の輸出量が同2.7%増とわずかに増加したものの、冷凍牛肉の輸出量が同11.7%減とかなりの程度減少したことが影響した。一方で、特徴的な動きとして、英国向け輸出量が増加していることが注目される。これは、冷蔵品ではポーランド(同18.6%増)およびオランダ(同11.9%増)、冷凍品ではドイツ(同404.9%増)およびポーランド(同1.6%増)から、比較的安価なものの輸出量が増加したことが要因として挙げられる。一方で、冷蔵・冷凍ともに英国向け輸出量第1位のアイルランドは、同期の輸出量を減少させた。英国が輸入した冷凍牛肉はドイツ、ポーランドからのほか、ブラジルやニュージーランドからも増加しており、英国農業・園芸開発委員会(AHDB)によると、この傾向は世界の冷凍食肉市場が今後成長していくという業界の動向を反映するものとしている。
一方、同期の冷蔵および冷凍牛肉輸入量(EU27ヵ国)は、主に英国を中心に同31.8%増と大幅に増加した(表3)。欧州委員会は、牛肉需要が安定する中で、EU域内での牛肉供給量の減少を輸入で補ったことが増加の要因としている。
(調査情報部 渡辺 淳一)