今後の牛飼養頭数は増加基調で推移
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は2023年1月、最新の牛肉生産量などの見通しとなる「Industry projections 2023」を公表した(表1)。
これによると、23年は牛群再構築が完了し、牛飼養頭数が2881万7000頭と、14年以来の水準にまで回復するほか、25年には2958万8000頭に達するなど、今後の天候にかかわらず、増加すると見通している。牛飼養頭数の増加に伴い、成牛と畜頭数も23年に662万5000頭、25年に800万頭まで増加するとしている。ただしMLAでは、食肉処理施設での労働力確保が依然として困難な状況にある中で、と畜処理の停滞による牛肉生産量および輸出量への影響が懸念されるとしている。
また、牛肉生産量の増加に伴い、牛肉輸出量も着実に増加するとして、23年に101万4000トン、25年に121万1000トンまで増加すると見通している。米国の干ばつによる牛群整理で同国産牛肉が席巻してきた日本や韓国、米国内の市場では、今後、米国産牛肉の供給減少および豪州産牛肉の生産増加見込みにより、豪州産牛肉が有利な立場に立つとしている。
牛肉輸出量、米国向けが日本向けを抜いて1位に
豪州農林水産省(DAFF)によると、2022年12月の牛肉輸出量は7万6118トン(前年同月比1.2%減)とわずかに減少し、22年1〜12月の通年では85万4592トン(前年比3.7%減)と03年以来最も低い輸出量となった(表2)。
輸出先別に見ると、20年8月以来1位であった日本向けを抜いて、12月は米国向けが1位となり、1万6634トン(前年同月比8.6%増)とかなりの程度増加した。ただし、22年1〜12月の通年では、これまで同国の牛肉供給が潤沢であったため、13万3925トン(前年比7.7%減)とかなりの程度減少した。日本向けは1万6429トン(前年同月比2.3%減)とわずかに減少したが、22年通年では21万4305トン(前年比8.3%減)と引き続き最大の輸出先となっている。中国向けは1万2950トン(前年同月比6.2%減)とかなりの程度減少したが、22年通年では15万8086トン(前年比6.6%増)と、主要輸出先の中で唯一増加した。
肉牛価格は年明けに急落
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、年明けに1キログラム当たり124豪セント(116円:1豪ドル=93.93円
(注))安でスタートし、2023年1月31日時点では同771豪セント(724円)となった(図1)。肉牛の取引などを行う豪州最大の農業関連デジタル取引プラットフォームを運営するオークションプラスは、牛群再構築が完了し、牛の需要が堅調に推移するとともに、平年並みの天候に戻るとみられることから(図2)、本年末のEYCI価格は同750豪セント(704円)前後で取引されると見通している。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年1月末TTS相場。
(調査情報部 国際調査グループ)