22年1〜11月の豚肉生産量、前年同期をわずかに下回る
チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2022年1〜11月の豚肉生産量は、52万7399トン(前年同期比2.1%減)と前年同期をわずかに下回った(図1)。豚肉生産量は、20、21年と2年連続で増加したものの、22年は前年を下回る水準で推移している。
チリの豚肉生産量は近年、養豚企業による繁殖成績や飼料要求率の改善、種豚の遺伝的改良など、生産の効率化や平均枝肉重量の増加により増加傾向で推移している。1頭当たり平均枝肉重量
(注1)は、17年の100.3キログラムから21年には106.0キログラムと5.7%増加し、直近(22年1〜11月)では105.6キログラムとなった。
(注1)枝肉重量には頭部と皮が含まれる。
22年1〜11月の豚肉輸出量、前年同期を大幅に下回る
2022年1〜11月の豚肉輸出量(冷蔵・冷凍)
(注2)は、16万2679トン(前年同期比16.6%減)と前年同期を大幅に下回った(図2)。豚肉輸出量は20年に3年連続で過去最高を更新後、減少に転じており、月別では、21年5月〜22年8月の間、16カ月連続で前年同月を下回った。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは、同国での豚飼養頭数の回復により豚肉需給が緩和した結果、6万7294トン(同46.0%減)とほぼ半減している。21年の同国向けは、輸出量全体の62.6%を占めていたが、22年1〜11月は41.4%に低下し、中国向けの減少が輸出量全体の減少につながっている。中国に次ぐ2番手の韓国向けは3万1171トン(同20.9%増)、3番手の日本向けは2万8031トン(同14.1%増)といずれも前年同期を上回った。このほか、コロンビア、コスタリカ、ペルーといった中南米向けも大幅に増加したものの、中国の落ち込み分を補うには至らなかった。
また、チリは22年12月9日、EUとの関係を強化するため、03年に発効したEU・チリ自由貿易協定(FTA)について、新たな包括協定に改定することに合意したと発表した。EUはチリに対し、豚肉については9000トンの関税割当数量を設定することとしている(注3)。
(注2)チリの豚肉輸出量は、ほとんどが冷凍品である。
(注3)海外情報「欧州委員会、EU・チリFTAを包括的な協定に改定することに合意(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003430.html)を参照されたい。
22年の肉豚生産者販売価格は前年比41.8%安
2022年の肉豚生産者販売価格は、中国向けを中心とした輸出需要の低下から1キログラム当たり0.89米ドル(117円:1米ドル=131.47円
(注4))となり、前年比41.8%安と大幅に下落した(図3)。22年は、豚肉生産者にとっては、生産者販売価格が低下するなかで、ウクライナ情勢、天候不順などによる飼料などの生産コスト高や世界的なインフレ圧力の増大により、厳しい経営環境となった。
(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年1月末TTS相場。
(調査情報部 井田 俊二)