22年11月の生乳出荷量、前年同月比2.1%増
欧州委員会によると、2022年11月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1120万6200トン(前年同月比2.1%増)となった(図1)。22年の生乳出荷量は、飼料、燃料および肥料費の高騰や熱波・干ばつの影響により、秋口までは減少が見込まれていた。しかし、その後は欧州の多くの地域で穏やかな天候が続いたことで放牧環境が良好になり、秋以降の生乳出荷量が増加した。現地情報によると、飼料費などの生産コストは依然高いものの、乳価がそれを上回って推移していることが、生産者の出荷意欲を後押ししているとしている。
同月の出荷量を国別に見ると、EU最大の生乳生産国であるドイツは同3.9%増、第2位のフランスは同1.1%増、第3位のオランダは同5.1%増となっている(表)。この上位3カ国でEU出荷量の4分の1以上を占めている。
生乳取引価格は高水準で推移も今後に懸念
欧州委員会によると、2022年12月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり57.41ユーロ(8213円:1ユーロ=143.06円
(注)、前年同月比40.2%高)と依然として前年同月を大幅に上回って推移しているものの、2年5カ月ぶりに前月を下回った(図2)。現地報道によると、後述する乳製品価格の下落により、今後も乳価の引き下げは避けられないだろうと予測している。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年1月末TTS相場。
乳製品価格は全体的に下落
欧州委員会によると、直近の2023年1月29日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり496ユーロ(7万958円、前年同期比14.4%安)、脱脂粉乳が同257ユーロ(3万6766円、同25.9%安)、全粉乳が同364ユーロ(5万2074円、同15.6%安)、ホエイパウダーが同80ユーロ(1万1445円、同34.6%安)といずれも前年同期を大きく下回り、ほぼ一貫して下落基調にある(図3)。現地情報によると、インフレによる価格の高騰が需要を減退させたとしており、特にドイツやフランスでは、バターなど一部の乳製品の売り上げが大幅に減少している。さらに、消費者のより低価格なプライベートブランドなどへの移行も見られるという。一方、チーズ(チェダー)は同464ユーロ(6万6380円、同36.8%高)と堅調に推移しているが、直近は下落基調にある。現地情報によると、22年は過去20年間で初めてチーズ生産量が減少したことで価格は上昇していたが、同価格の急激な上昇により消費者の購買意欲が減少した可能性を指摘している。
(調査情報部 上村 照子)