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海外需給動向【牛乳・乳製品/NZ】畜産の情報 2023年3月号

生産者支払乳価、乳製品国際価格の下落基調を反映し後退の見込み

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22年12月の生乳生産量、6カ月連続で前年同月を下回る
 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2022年12月の生乳生産量は258万8200トン(前年同月比0.6%減)と6カ月連続で前年同月割れとなった(図1)。ニュージーランド証券取引所(NZX)は今後の生乳生産量について、夏季(12月〜翌2月)は天候が好転し、牧草の生育改善が見込まれることから、前年同水準まで回復すると見込んでいる。
 一方で、現地報道では、同月は北島を中心に激しい雨が断続的に降り、西部低地の複数の農場で浸水などの被害が相次いだとしている。また、大雨の影響で、ワイカトなどの一部地域では、飼料用トウモロコシの播種はしゅ作業に大幅な遅延が生じ、冬季(6〜8月)の飼料不足が懸念されるなど、生乳生産は依然として厳しい状況にあるとしている。

 
乳製品輸出量、全粉乳を除く主要3品目が大幅増
 ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2022年12月の乳製品輸出量は、全粉乳を除く主要3品目で前年同月を上回った(表、図2)。品目別に見ると、脱脂粉乳は主要輸出先であるインドネシア向けが前年同月比で2倍弱増加したことで全体でも大幅に増加した。全粉乳は最大の輸出先である中国向けが同4割程度減少したことで全体でもかなり大きく減少した。中国では、COVID-19に起因する需要の低下から、国内の乳製品需給が緩和傾向にあり、粉乳に仕向けられる生乳が増加しているとされている。一方、バターおよびバターオイル、チーズについては、主要輸出先の日本、豪州、韓国向けがそれぞれ増加したことで全体でも大幅に増加した。



 
GDT価格、チーズが値上がりも大きな変動はなし
 2023年1月17日に開催されたGDT(注1)の1トン当たりの平均取引価格は、チーズが前回開催(1月3日)からやや値上がりしたものの、その他3品目に大きな変動は見られなかった(図3)。GDT価格は、22年3月に過去最高値に達して以降、中国でのCOVID-19の拡大やインフレ圧力に起因する世界的な乳製品需要の減退などを受けて、下落傾向で推移している。今後の市場動向については、中国でゼロコロナ政策が緩和されたものの、粉乳を中心に国内在庫が積み上がっていることから、「中国が国際市場に戻るのはもう少し先になる」との見解が大方を占めており、乳製品市場は引き続き不透明な状況が続くとされている。
 また、同価格の下落基調を受けて、NZ乳業大手のフォンテラ社は12月8日、22/23年度(6月〜翌5月)の生産者支払乳価を生乳の固形分(注2)1キログラム当たり平均9.25NZドル(799円:1NZドル=86.34円(注3))から同9.00NZドル(777円)に下方修正すると公表した。今後の状況次第では、さらなる下方修正の可能性があるほか、次年度の生産者支払乳価への影響も懸念されている。

(注1)グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。
(注2)乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年1月末TTS相場。

(調査情報部 工藤 理帆)