22年の生乳生産量、前年比6.8%増
中国国家統計局によると、2022年の生乳生産量は、前年比6.8%増の3932万トンとなった(図1)。
中国農業農村部は、22年4月に公表した「中国農業展望報告(2022-31)」
(注1)の中で、同年の生乳等生産量
(注2)を3979万トン(前年比5.4%増)と予測していた。しかし、(1)22年の生乳のみの生産量が3932万トンに達したこと(2)生乳以外の乳の過去3年平均生産量が101万トンであること―を加味すると、22年の生乳等生産量は同国史上初めて4000万トンの大台を超える可能性が高いとみられる。
(注1)海外情報「中国農業展望報告(2022-2031)を発表(乳製品編)(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003277.html)を参照されたい。
(注2)牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなどの他品種由来の乳を含む生産量。
需給の緩和で生乳価格は低下傾向
生乳価格は、2021年8月以降、緩やかな下落または横ばいで推移しており、23年1月には1キログラム当たり4.12元(81円:1元=19.60円
(注3)となった(図2)。この価格水準は、3元台で推移していた20年中盤との比較では高値といえるが(20年同月比7.0%高)、前年同月比では3.5%安となっている。最近の価格動向について現地専門家からは、政府主導の酪農振興などにより生乳の生産能力は大いに向上し続けている一方で、COVID-19の拡大などから消費が落ち込み、需給が緩和していることなどが要因に挙げられた。また、一般的に酪農家に比べて乳業メーカーの価格交渉力が強いため、地方を中心に政府統計値より低い価格で生乳取引が行われており、生乳価格の下落と飼料価格高騰によるコスト上昇という二重の圧力から、苦境に立たされている酪農家も少なくないとの意見も聞かれた。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年1月末TTS相場。
22年の乳製品輸入量は大幅減
2022年の主要乳製品輸入量は、バターおよび育児用調製粉乳を除く5品目で減少した(表)。前年(21年)の輸入量が非常に大きかったことが影響しているが、現地では、「過去30年で最大の減少幅」とも報道されている。22年の乳製品輸入の特徴として、(1)国際相場の高騰や国内の生乳供給増加などによる輸入品の価格優位性や輸入意欲の低下(2)COVID-19に起因する、国産も含めた乳製品全体の需要低下による輸入需要の減退―など、輸入量減少となった背景が挙げられる。
(調査情報部 阿南 小有里)