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海外需給動向【飼料穀物/中国】畜産の情報 2023年3月号

トウモロコシおよび大豆の価格動向

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国産トウモロコシ価格、供給増から弱含みで推移と予想
 中国農業農村部は1月20日、「農産物需給動向分析月報(2022年12月)」を公表した。この中で、2022年12月の国産トウモロコシ価格は前月からわずかに上昇した(図1)。同月の国内のトウモロコシ需給を見ると、供給面では、政府によるゼロコロナ政策からの転換が図られたことで物流が全面的に回復し、市場供給量の大幅な増加が報告されている。需要面では、同じく政策の転換による今後の消費増への期待から、トウモロコシ加工業者を中心に在庫の確保が進むとされている。今後、備蓄されていた前年産のトウモロコシの市場放出も予想される中で、需給がやや緩和に向かい、価格は弱含みで推移すると見込まれている。

 
 各地の価格動向を見ると、主要養豚生産地である中国南部向け飼料原料集積地となる広東省黄埔港到着の輸入トウモロコシ価格(関税割当数量内:1%の関税+25%の追加関税)は、22年12月が1キログラム当たり2.90元(57円:1元=19.60円(注))となった。22年3月以来、国産価格を上回って推移していた輸入トウモロコシ価格は2カ月連続で下落し、国産価格を下回ることとなった。また、同月の国産トウモロコシ価格(東北部産の同港到着価格)同3.02元(59円)に比べて同0.12元(2円)安となり、国産と輸入との価格は逆転している。

国産大豆価格、需給の緩みから下落も今後は安定と予想
 2022年12月の国産大豆価格は、前月に続きわずかに下落した(図2)。同月の国内の大豆需給を見ると、供給面では、今期の大豆生産量の大幅な増加により市場には十分な供給が行われていると報告されている。一方、需要面では、前月に続き川下の需要は緩慢な状況にあるとされている。このため、需給はやや緩和傾向にあるが、外出制限の撤廃などによる消費の回復に合わせて、価格は安定すると見込まれている。
 各地の価格動向を見ると、主産地である黒竜江省の食用向け国産大豆平均取引価格は、12月が1キログラム当たり5.66元(111円、前年同月比7.6%高)と高い水準で推移している。また、大豆の国内指標価格の一つとなる山東省の国産大豆価格は、同6.24元(122円、同4.7%高)と同じく高い水準にある。国産大豆と輸入大豆との価格差は、国産大豆価格が下落する中で、大豆国際相場の落ち着きもあり、1キログラム当たり0.74元(15円)とわずかに広がった。
 このような中で大豆の輸入量は、前年に比べて減少しつつも引き続き高い水準で推移している。22年(1〜11月)の輸入量は8054万トン(前年同期比8.1%減)、輸入額は世界的な穀物相場高の影響から同12.5%増の542億8400万米ドル(7兆1367億円:1米ドル=131.47円(注))と報告されている。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年1月末TTS相場。


22/23年度のトウモロコシ、大豆の生産量を上方修正
 中国農業農村部は2023年1月12日、最新の「中国の農産物需給状況分析」を公表した。このうち、22/23年度(10月〜翌9月)のトウモロコシの需給見通しについて、作付面積および収穫面積、生産量のいずれも前月から上方修正された(表1:網掛け)。今回(1月)の予測では、作付面積および収穫面積が前月から12万ヘクタール上方修正の4307万ヘクタール(前年度比0.6%減)、生産量が同189万トン上方修正の2億7720万トン(同1.7%増)となった。この結果、輸入量および消費量に変更がなかったことで、同年度のトウモロコシの過不足は468万トンの余剰(同30.6%減)が見込まれている。
 また、同年度の大豆の需給見通しについて、トウモロコシと同様に作付面積および収穫面積、生産量のいずれも前月から上方修正された(表2:網掛け)。今回の予測では、作付面積および収穫面積が前月から31万ヘクタール上方修正の1024万ヘクタール(同21.9%増)、生産量が同81万トン上方修正の2029万トン(同23.7%増)となった。この結果、輸入量および消費量に変更がなかったことで、同年度の大豆の過不足は247万トンの余剰(前年度は7万トンの不足)が見込まれている。
  22年10月時の予測では、トウモロコシの作付面積や生産量が上方修正された中で大豆はいずれも据え置かれていた。22/23年度は中央政府から大豆の増産に全力を挙げるとの方針が打ち出されたこともあり、主産地での収穫が終了し生産量がほぼ確定する今回の予測が注目されていた。



 
(調査情報部 横田 徹)