2015年9月、国連持続可能な開発サミットにおいて、全会一致によって採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」の中で「持続可能な開発目標(SDGs)」として、17 のゴールと 169 のターゲットが設定された。
このSDGsの達成に向け、G20農業大臣会合や国連食料システムサミットにおいて、持続可能な食料生産システムへの変革のため、すべての人々の関与が必要との認識が共有されるなど、あらゆるレベルの国際会議において活発な議論が行われている。
一方、わが国においても、農林水産省が食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するため、「みどりの食料システム戦略」を策定した。さらに食の生産・加工・流通・消費に関わる幅広い関係者が一堂に会し、対話を通じて、情報や認識を共有し、具体的行動にコミットするため、「持続可能な食料生産・消費のための官民円卓会議」を設置するなど、農林水産分野における環境負荷軽減や持続的な食料システムの構築に向けた動きが加速している。
このうち、畜産分野においては、農林水産省が「持続的な畜産物生産の在り方検討会」を設置し、(1)家畜飼養に起因する温室効果ガスや水質汚濁、悪臭などの環境負荷(2)畜産経営者の高齢化や担い手不足による畜産経営の労働力確保(3)気候変動や世界的な人口増加による輸入飼料に対する供給不安―といった持続可能な畜産物生産に向けた各種課題を整理するとともに、これらの課題に対応するための戦略とそれに基づく具体的な取り組みを「中間とりまとめ」として公表した。
今後も安定的に国産畜産物の生産・供給拡大を図るためには、国際的な潮流も踏まえた中で、畜産分野として地球温暖化対策をはじめとした、持続的な食料システムの構築に向けた取り組みを推進する必要がある。今号では、SDGsの達成に向けた、北米、欧州、大洋州およびアジア地域における各国政府・民間の各段階の取り組みや今後の動向について報告することとしており、本報告が持続的な食料システムに関する主要国の動きを理解し、今後のわが国における具体的な取り組みを検討する一助となれば幸いである。