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国内需給動向【令和4年度食肉の輸出需向】畜産の情報 2023年4月号

令和4年の畜産物の輸出動向について

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 令和4年の農林水産物・食品の輸出については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が続くものの、多くの国・地域で、外食需要が回復するとともに、小売やEC販売などが引き続き堅調だったことに加え、円安による海外市場での割安感も追い風となり、過去最高額となる1兆4148億円(前年比14.3%増)に達した。そのうち、畜産物は968億2000万円(同8.6%増)となったところであるが、その畜種別の輸出動向を紹介する。

【牛肉】
輸出量、前年比5.4%減

 4年の牛肉輸出量(牛くず肉を除く。以下同じ)は、台湾や欧州への輸出量が伸びたものの、全体では7454トン(前年比5.4%減)とやや減少した(図1)。これは、米国における物価高および低関税枠超過後の関税引き上げによる需要減退の影響などによるものとみられる。
 また、同年の輸出先は42カ国・地域に上り、その国・地域別の輸出シェアを見ると、香港向けが18%となり、前年トップだったカンボジアを上回った。次いで米国が17%、カンボジアが12%となった。
 4年の輸出金額は、513億4562万円(同4.3%減)と前年からやや減少した。また、同年の牛肉輸出量の部位別割合を見ると、全体に占める「ロイン」の割合が56%と最も高く、次いで「かた・うで・もも」が28%、「ばら」が14%となった(図2)。なお、北米や欧州向けはサーロインなどのロインを中心とした輸出となっている一方、アジア向けはフルセットでの輸出が比較的多く、全体を含めこの傾向に変化は見られない。




 
 4年の冷蔵・冷凍別の牛肉輸出量を見ると、冷蔵は3737トン(同7.1%増)と前年をかなりの程度上回った一方、冷凍は3717トン(同15.3%減)と前年からかなり大きく減少した(図3)。全体に占める「冷蔵」と「冷凍」の割合は50%:50%となったが、前年からは「冷蔵」は6ポイント上昇した一方、「冷凍」が6ポイント低下した。輸出量のうち、カンボジア向けは冷凍の割合が高く、台湾向けは冷蔵の割合が高い傾向がある。その中で輸出量のシェア率において、台湾がカンボジアを上回ったことに加え、和牛肉は富裕層を中心に一定のブランドとして認知されており、eコマースなどで冷蔵肉の販路がさらに拡大されたことなどによるものとみられる。

 
【豚肉】
輸出量、前年比9.1%減

 4年の豚肉輸出量(豚くず肉を除く。以下同じ)は、1473トン(前年比9.1%減)と前年からかなりの程度減少した(図4)。同年の輸出先は、日本国内での豚熱(CSF)発生を受けて平成30年11月以降台湾向け輸出の一時停止が続いており、輸出実績としては、前年と同数の7カ国・地域となった。国・地域別シェアでは、香港向けが77%と最も高く、次いでシンガポール向けが18%となった。
 令和4年の輸出金額は、19億1634万円(同1.1%減)と前年からわずかに減少した。香港における外食制限の影響に加え、日本国内で国産豚肉の需要が輸入豚肉価格の高騰により高まったことなどから、輸出量および輸出金額が減少したとみられる。この傾向はソーセージやハムなどを含む豚肉加工品(豚肉調製品(ゆでた豚足など)を除く。以下同じ)でも見られ、4年の輸出量は72トン(同23.3%減)と前年から大幅に減少した(図5)。
 




【鶏肉】
輸出量、前年比37.4%減

 4年の鶏肉輸出量は、日本国内での高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)発生を受けた輸出停止および輸出先での需要減退などの影響により、3318トン(前年比37.4%減)と前年から大幅に減少した(図6)。同年の輸出先は、前年と同数の5カ国・地域となった。国・地域別に見ると、シェアは香港向けが77.7%と最も高く、次いでカンボジア向けが12.4%となった。
 なお、輸出金額も、10億1454万円(同21.7%減)と前年から大幅に減少した。


 一方、空揚げやサラダチキンといった鶏肉加工品の輸出量は、816トン(同33.6%増)と前年から大幅に増加した(図7)。国・地域別では、香港向けの割合が95.7%となった。
 なお、輸出金額も、9億8875万円(同42.0%増)と前年から大幅に増加した。


【牛乳・乳製品】
輸出金額、前年比30.9%増

 4年の牛乳・乳製品の輸出金額は過去最高額の319億円(前年比30.9%増)と大幅に増加した(図8)。
 主な輸出先である台湾や香港、シンガポールなど東南アジアへの輸出量が増え、全体輸出金額が増加する結果となった。
品目別に見ると、最も輸出金額の多い育児用粉乳が144億円(同9.1%増)、次いで、アイスクリームその他氷菓が65億円(同15.3%増)、チーズが19億円(同7.8%減)、LL牛乳が20億円(同12.3%増)となった。
 その他については、特に粉乳類の輸出量が大きく伸びており、国別に見ると輸出金額の多い順にフィリピン、次いでマレーシア、シンガポールとなっている。


【鶏卵】
輸出量、前年比39.1%増

 4年の鶏卵(殻付き卵)の輸出量は3万556トン(前年比39.1%増)、輸出金額は84億436万円(同43.3%増)となった(図9)。
 輸出量を国・地域別で見ると、鶏卵の総輸出量の約93%を占める香港向けが2万8256トン(同30.8%増)、次いで台湾向けが1952トン(前年0トン)と、いずれも大幅に増加した。香港においては内食需要が増加したことで、引き続き日本産鶏卵の市場が拡大している状況がうかがえる。また、日本国内におけるHPAIの発生により一部の国・地域への輸出制限があったものの、4年にはHPAIの発生県以外からの輸入が特例的に認められた台湾への輸出が増加した。 
 日本の高い衛生管理による鮮度や品質が評価されていることからも、今後、さらなる需要拡大が期待されている。


(食肉、鶏卵:畜産振興部 田中 美宇、牛乳・乳製品:酪農乳業部 橋 沙織)