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海外需給動向【牛肉/豪州】畜産の情報 2023年4月号

22年のと畜頭数は低水準も、23年の牛肉輸出量は増加の兆し

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22年のと畜頭数は1984年以来の低水準
 豪州統計局(ABS)が2023年2月に公表した統計によると、22年10〜12月期の牛のと畜頭数は147万頭(前期比1.1%減)、通年では585万頭(前年比2.8%減)といずれもわずかに減少した(図1)。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、これは1982〜83年に発生した20世紀で最も深刻とされる干ばつの影響を受けた84年以来となる最低の水準であったとしている。他方で同期の牛肉生産量は47万トン(前期比1.0%減)、通年では187万トン(前年比0.8%減)となった。雨が多く飼料確保が容易であったため1頭当たり枝肉重量が高水準であったことから、と畜頭数の減少を一部相殺する状況となった。

 
 また、同期の雌牛のと畜頭数割合は、43.4%と前期比で0.9ポイント上昇したが、通年平均では42.8%と低下傾向にあり、降雨によって潤沢な牧草があることを背景として、牛群再構築の進展がうかがえる状況にある(図2)。

 
 他方で豪州フィードロット協会(ALFA)によると、同期のフィードロット飼養頭数は、牛と穀物の価格が軟化したことを背景に、114万5228頭(前期比8.4%増)とかなりの程度増加した(注1)。MLAによると、22年のフィードロットへの導入頭数が多かったことなどから、23年も引き続き穀物肥育牛の供給が活発となることが予想されるとしている。

(注1)海外情報「2022年12月末フィードロット飼養頭数、2期連続の減から回復(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003467.html)を参照されたい。

肉牛価格は過去5カ年平均を下回る
 肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年10月を頂点に下落傾向にある(図3)。23年2月27日時点の同価格は、1キログラム当たり719豪セント(675円:1豪ドル=93.90円(注2))となり、23年2月下旬以降は過去5カ年平均を下回る水準にある。
 業界アナリストによると、米国や中国での豪州産牛肉の需要が低迷していることに加え、豪州気象庁による今後のラニーニャ現象の収束と平年並みの降雨予報などを踏まえ、牧草量に応じた牛を確保する観点から、牧草肥育業者からの牛の購入需要が低迷しているとしている。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年2月末TTS相場。


牛肉輸出量は大幅に増加
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2023年1月の牛肉輸出量は5万1471トン(前年同月比18.7%増)と大幅に増加した(表)。例年1月は年末年始の休暇や食肉処理施設のメンテナンスなどにより、輸出量は低い水準となる傾向にあるが、今年は牛群再構築が完了したことで、前年同月から大きく増加している。
 MLAが同年1月に公表した見通し(注3)によると、23年の牛肉輸出量は101万4000トンと22年から18.7%増と大幅に増加すると予想している。

(注3)「Industry projections 2023」において、牛肉生産量の増加に伴う輸出量増加の見通しを発表した。『畜産の情報』2023年3月号「牛群再構築の完了で、23年の牛肉生産・輸出量は増加の見通し」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002614.html)を参照されたい。



 
(調査情報部 国際調査グループ)