畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 22年の牛肉輸出量、輸出額ともに増加

海外需給動向【牛肉/アルゼンチン】畜産の情報 2023年4月号

22年の牛肉輸出量、輸出額ともに増加

印刷ページ
22年の牛肉生産量は2年ぶりに増加
 アルゼンチン経済省によると、2022年の牛肉生産量は313万4000トン(前年比5.1%増)と前年をやや上回り、2年ぶりの増加となった(図1)。また、牛と畜頭数は1349万9000頭(同3.9%増)、平均枝肉重量は232.2キログラム(同1.1%増)となった。
 これは、(1)飼料費の高騰など生産コストの上昇(2)牛肉の輸出規制の実施(3)インフレに伴う消費者の購買力の低下−といった状況がある一方で、中国を中心とした堅調な海外需要や高水準の肉牛価格により肉牛生産者の生産意欲が高まったためとみられる。


22年の牛肉輸出量は中国向けを中心に前年をかなり大きく上回る
 アルゼンチン国家統計院によると、2022年の牛肉輸出量は62万2188トン(前年比11.1%増)と前年をかなり大きく上回り、2年ぶりの増加となった(表)。また、輸出単価が上昇(同11.7%高)した結果、輸出額は同24.1%増と前年を大幅に上回った。これは、国内牛肉価格を抑制し消費を回復させるため、21年5月に同国政府が実施した牛肉輸出規制による同年の輸出量減少の反動と考えられる。なお、この輸出規制措置はその後、徐々に緩和されたものの、一部品目の輸出禁止などの措置は依然継続されている(23年末まで延長)。
 輸出先別に見ると、全体の79%を占める中国向けは49万632トン(同15.6%増)と前年をかなり大きく上回った。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による移動制限や景気の後退があるものの、低価格の経産牛由来の冷凍フルセットのほか、去勢牛・未経産牛由来の前四分体、経産牛由来のその他の牛肉を中心に冷蔵・冷凍で輸出された。また、中国向けの10分の1以下ながらもイスラエル向け(同2.3%増)、ドイツ向け(同9.4%増)も前年を上回った。一方、チリ向けは2万2974トン(同30.6%減)と前年を大幅に下回った。これは、同国向けには若齢の去勢牛や未経産牛由来の冷蔵フルセットの輸出が中心となるが、パラグアイをはじめとした近隣国との競合が強まったためとみられる。


22年の肥育牛(去勢)出荷価格、前年に続き大幅に上昇
 2022年の肥育牛(去勢)の出荷価格は、海外からの堅調な牛肉需要や急激なインフレの進行などにより前年に続き大幅に上昇した。同国の肉用牛相対取引の指標となっているリニエルス家畜市場の22年12月の取引価格は、1キログラム当たり288.69ペソ(202円:1ペソ=0.70円(注))と、前年同月比27.1%高となった(図2)。近年の状況を見ると、肥育牛(去勢)価格は上昇傾向で推移しており、21年5月には牛肉輸出規制により一時的に下落したものの、その後再び上昇し、22年4月以降は同280ペソ(196円)前後の高値を維持している。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年2月末Selling相場。

 
(調査情報部 井田 俊二)