畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 22年の豚肉輸出量、前年をかなりの程度下回る

海外需給動向【豚肉/米国】畜産の情報 2023年4月号

22年の豚肉輸出量、前年をかなりの程度下回る

印刷ページ
23年1月の豚肉生産量、と畜頭数の増加から前年同月比6.4%増
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2023年1月の豚と畜頭数は1113万300頭( 前年同月比6.9%増)とかなりの程度増加した。これは、昨年末に北米地域を襲った寒波の影響から一部の食肉処理加工施設が稼働停止となり、同時期のと畜・処理加工が滞ったことの反動などが要因とされる。また、23年1月の豚肉生産量は、と畜頭数が前年同月を上回ったことから110万100トン(同6.4%増)とかなりの程度増加した(図1)。

 
23年1月の豚肉卸売価格は前年同月比10.5%下落
 2023年1月の豚肉卸売価格(カットアウトバリュー(注1))は、国内需要が停滞する中で豚肉供給量の増加などから、100ポンド当たり81.03米ドル(1キログラム当たり245円:1米ドル=137.33円(注2)、前年同月比10.5%安)とかなりの程度下落した(図2)。
 部位別に見ると、ロインやもも(ハム)は前年を上回る価格で推移しているものの、ベリー(バラ肉)は在庫量の積み増しにより大きく下落し、これが全体を引き下げる要因となった。

(注1)カットアウトバリューとは、各部分肉の卸売価格を1頭 分の枝肉に再構築した卸売指標価格。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・ 月中平均の為替相場」の2023年2月末TTS相場。


22年の豚肉輸出量、中国・香港向けが大幅に減少し前年比9.8%減
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2022年12月の豚肉輸出量は25万4600トン(前年同月比5.4%増)とやや増加したものの、22年累計では、287万4700トン(前年比9.8%減)と前年をかなりの程度下回った(表)。輸出先別に見ると、中国・香港向けが中国国内の豚肉生産回復により28万8800トン(同46.0%減)と前年から大幅に減少したことが影響している。他方で、輸出先第1位であるメキシコ向けは、旺盛な需要により106万300トン( 同13.6%増)とかなり大きく増加し、好調を維持している。同国では食品価格高騰の影響を受け、牛肉から豚肉への需要が高まっており、23年の豚肉消費量は22年を上回ると予測されている。一方、日本向けは米ドル高で推移した為替相場の影響によりEUやカナダなど他国からの輸入が増えた結果、49万1200トン(同11.4%減)とかなり大きく減少した。23年の第1四半期(4 〜 6月)の豚肉輸出についてUSDAは、国内生産が増加する中で、昨年秋から米ドルが下落傾向にあることから、今後はアジア向け輸出の競争力が強化されると見込んでいる。


 
(調査情報部 伊藤 瑞基)