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海外需給動向【豚肉/EU】畜産の情報 2023年4月号

豚飼養頭数の減少などにより豚枝肉価格が大幅上昇

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と畜頭数の減少に伴い生産量はかなり減少
 欧州委員会によると、2022年11月の豚肉生産量(EU27カ国)は、192万9730トン(前年同月比7.4%減)とかなりの程度減少した(図1)。同月の1頭当たり枝肉重量は93.3キログラム(同0.1%減)と前年並みであったものの、と畜頭数が2069万頭(同7.3%減)とかなりの程度減少したことが影響した。
 欧州委員会によると、豚肉生産量の減少の要因として、多くの生産者が飼料費や燃料費など生産コストの増加による厳しい経営状況に直面していることに加え、アニマルウェルフェアや環境規制、アフリカ豚熱などの不確定要素が挙げられている。
 国別に見ると、第1位のスペイン(同3.6%減)、ドイツ(同7.5%減)、フランス(同1.6%減)の上位3カ国を始め、オランダ(同0.1%増)を除くすべての主要生産国で前年同月を下回った(表1)。



 
23年1月の枝肉価格、前年同月比54.1%高
 欧州委員会によると、2023年1月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比54.1%高の100キログラム当たり202.78ユーロ(2万9628円:1ユーロ=146.11円(注))と大幅に上昇した(図2)。欧州委員会が公表した22年12月時点の豚総飼養頭数は、前年同月比5.2%減となり、すべての体重カテゴリーで減少していることから、今後も域内の需給はひっ迫傾向と見込まれる。

 
 ただし、枝肉価格の上昇については国により状況が異なっており、ドイツ(同61.3%高)やポーランド(同60.8%高)は大きく上昇しているが、域外輸出の多いデンマークは、国際相場を反映して上昇幅が抑えられている(同37.1%高)。現地情報によると、22年秋以降のEUの豚肉価格は、米国、ブラジル、カナダなど競合する豚肉輸出国に比べて高い。このことが、デンマークなど輸出を主体とした国の価格が抑制される一因としている。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年2月末TTS相場。

中国向け輸出、大幅減も最大の輸出先を維持
 欧州委員会によると、2022年12月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は21万3945トン(前年同月比16.3%減)、1〜12月の年間輸出量は290万1862トン(前年比19.9%減)とともに大幅に減少した(表2)。年間輸出量について主要輸出先別に見ると、中国向けは前年比46.6%減と大幅に減少したものの、輸出先第1位を維持している。同国向けは同年前半に大きく減少したが、秋以降の輸出量は回復してきている。一方、日本向け(前年比27.0%増)、韓国向け(同9.1%増)、豪州向け(同20.4%増)、フィリピン向け(同30.1%増)は、いずれも増加している。

 
(調査情報部 上村 照子)