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海外需給動向【鶏肉/ブラジル】畜産の情報 2023年4月号

22年の鶏肉輸出量は2年連続で増加

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22年の鶏肉輸出単価、輸出額ともに大幅に上昇
 ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2022年の鶏肉輸出量は436万6861トン(前年比3.9%増)と前年をやや上回り2年連続で増加した(表)。これは、米ドルに対するレアル安で推移した為替相場のほか、アジア、EUおよび北米などで発生したHPAIやウクライナ情勢などが、鶏肉の需要増につながったためとみられる。また、これらの需要に加えて、飼料やひななどの生産コストの上昇を反映し、輸出単価(同22.2%高)、輸出額(同26.9%増)とともに前年を大幅に上回った(図1)。



 
 輸出先別に見ると、最大の中国向けは53万9682トン(同15.6%減)と前年をかなり大きく下回った。これは、同国の輸入業者が鶏肉の取引価格の上昇およびCOVID-19の規制に伴う保管冷蔵庫の一時的な閉鎖という状況下で、資金繰り問題が生じたことなどが要因とされる。一方、アラブ首長国連邦(UAE)向けは44万2955トン(同13.9%増)とかなり大きく増加し、日本を抜いて中国に次ぐ輸出先となった。UAE向けは、同国内の鶏肉生産量が輸入飼料費などの生産コストの上昇や同国政府による鶏肉の価格統制により減少している中で、経済成長や人口の増加による国内需要の増加や再輸出先である近隣諸国からの需要の増加が要因とされている。また、日本向けは41万609トン(同6.3%減)と前年をかなりの程度下回った。このほか、サウジアラビア向けや南アフリカ共和国向けが減少する一方で、フィリピン、韓国、シンガポールといったアジア向けが大幅に増加した。

22年の鶏肉卸売価格は高水準で推移
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2022年のブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州、名目価格)は、1月に1キログラム当たり5.81レアル(153円:1レアル=26.37円(注))の安値となった後、上昇に転じた(図2)。これは、ウクライナ情勢や米国でHPAIが発生し同国からの鶏肉輸出量が減少し、国際的に鶏肉の需給がひっ迫したことに加え、不安定な飼料供給に起因する生産コストの上昇などを反映したものとみられる。この結果、鶏肉卸売価格は、4月に同8レアル(211円)に達し、11月半ばまで同8レアル前後の高水準で推移した。その後は需要の減退により価格が下落し、直近の価格は同6.97レアル(184円、23年2月17日現在)となっている。
  近年の状況を見ると、堅調な需要を背景に20年6月ごろから上昇傾向で推移し、21年9月中旬には統計が公表された04年以降で最高値となる同8.57レアル(226円)を記録した。その後は高値を回避する動きから需要が減退し、21年10〜12月にかけて価格は下落傾向で推移した。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年2月末Selling相場。


周辺諸国でHPAIが発生
 南米では、2022年末ごろから水鳥などの野鳥を中心にHPAIの発生が確認されている。23年1月までには、コロンビア、ベネズエラ、ペルー、チリで発生が確認されており、2月には、ボリビア、ウルグアイで野鳥、アルゼンチンの複数の地域で野鳥や庭先の家きんで感染が確認された。さらに、3月1日にはアルゼンチンリオネグロ州のブロイラー生産農家で初めてHPAIの発生が確認され、同国は家きん肉などの一時輸出停止措置を講じた。現地報道によると、これらは渡り鳥を介して感染が拡大しているとみられる。このため、ブラジルでは渡り鳥の飛来地などでの監視を強化している。特にウルグアイでの感染は、ブラジルの鶏肉主産地である南部地域の国境に近いことから警戒感を強めている。

(調査情報部 井田 俊二)