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海外需給動向【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2023年4月号

22年の生乳出荷量は前年並み、飼養頭数は前年割れ

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22年12月の生乳出荷量、前年同月比0.9%増
 欧州委員会によると、2022年12月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1147万90トン(前年同月比0.9%増)となった(表1)。22年上半期の生乳出荷量は、熱波や干ばつの影響により前年同期比で減少した一方、下半期は穏やかな天候が続き豊富で良質な牧草に恵まれ、また、過去最高水準の生乳価格にけん引される形で生乳出荷量が前年同期比で増加した(図1)。結果として22年の生乳出荷量は、前年比0.1%減の前年並みとなった。しかし、業界団体によると、飼料穀物価格の上昇による配合飼料使用量の減少や上半期の熱波の影響により、乳脂肪分とタンパク質含有量は前年を下回ったとされている。



 

 生乳取引価格、依然として高水準で推移
 欧州委員会によると、2023年1月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり56.97ユーロ(8324円:1ユーロ=146.11円(注)、前年同月比36.3%高)と依然として前年同月を大幅に上回って推移している。一方、前月比では0.8%安となり、2カ月連続で前月をわずかに下回った。業界団体によると、飼料などの高騰する資材価格に下落の兆しもあるため、この生乳取引価格の下落は当面の間、生乳出荷量に大きな影響を及ぼすことはないとしている。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年2月末TTS相場。

乳製品価格は下落する中、バターと脱脂粉乳は反転の兆し
 欧州委員会によると、直近の2023年2月19日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり497ユーロ(7万2617円、前年同期比16.4%安)、脱脂粉乳が同261ユーロ(3万8135円、同27.1%安)と前年同期を大幅に下回っている(図2)。しかしながら、バターおよび脱脂粉乳を前週の価格と比較すると、それぞれ0.8%高、2.5%高となった。業界団体によると、消費者物価がやや緩和に向かい小売バターの需要や、脱脂粉乳の輸出需要が出てきたことから、価格が上昇に転じたとみており、今後の動向が注目されている。

 
乳用経産牛飼養頭数、7年連続で減少
 欧州委員会によると、2022年12月時点の乳用経産牛飼養頭数(EU27カ国)は、2008万7860頭(前年比0.6%減)と7年連続で前年を下回った(表2)。2大酪農国のドイツ(同0.6%減)およびフランス(同2.7%減)も飼養頭数を減少させており、両国とも8年連続の減少となった。ただし、ドイツの減少率は21年12月時点の同2.3%減に比べ小さくなった。一方、この他の主要生産国では、ポーランド、オランダ、アイルランドが飼養頭数を増やすとともに生乳出荷量も増やしている。しかし、厳しい環境規制のあるオランダではさらなる増頭・増産は難しいと考えられる。
 

 
(調査情報部 渡辺 淳一)