と畜頭数の減少などにより牛肉生産量減少
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2023年2月の牛と畜頭数は250万頭(前年同月比5.1%減)とやや減少した(図1)。現地情報によると、多くの雌牛がと畜された昨年の干ばつ時と比べ今年の状況は改善されていること、生産者が今後も堅調な利益が見込めるとして牛群の再構築に向かうことがと畜頭数の減少の要因としており、今後もこの傾向は続くと予測している。
また、同月の牛肉生産量は94万9000トン(同7.0%減)とかなりの程度減少した(図2)。USDAは、と畜頭数が減少したことに加えて、冬の到来が早かったことで肥育牛の増体が悪く、1頭当たり枝肉重量の低下につながったことが生産量減少の要因としている。
23年2月も肥育牛価格は高値で推移
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2023年2月の肥育牛価格は100ポンド当たり161.99米ドル(1キログラム当たり480.44円:1米ドル=134.53円
(注)、前年同月比15.4%高)とかなり大きく上昇した(図3)。USDAは、米国内での肥育牛の供給がひっ迫していること、さらに枝肉重量が低下していることが、肥育牛価格上昇の要因としている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年3月末TTS相場。
牛肉輸出は減速続く
USDA/ERSによると、2023年1月の牛肉輸出量は11万50トン(前年同月比15.7%減)とかなり大きく減少した(表1)。輸出先別に見ると、日本向けはかなりの程度(同6.9%増)、メキシコ向けは大幅に(同30.8%増)増加しているものの、韓国向け(同36.8%減)、中国向け(同25.3%減)、台湾向け(同34.0%減)はそれぞれ大幅に減少している。USDAによると、牛肉輸出は数カ月前からドル高で推移する為替の影響やインフレなど経済的な逆風にさらされており、23年は年間を通じてこれら課題に直面し続けると見通している。
一方、1月の牛肉輸入量は16万5407トン(同3.6%増)と、高水準であった22年の輸入量をさらに上回った(表2)。主要輸入先ではメキシコが唯一減少しているものの、ブラジル(同4.8%増)、カナダ(同13.8%増)が増加し、この2カ国で全体の5割強を占めている。昨年、ブラジルからの牛肉輸入量は、牛肉の低関税枠が消化された最初の3カ月間増加し、その後漸減していった。USDAは、23年の同国からの牛肉輸入量も同じような傾向で推移する可能性を指摘している。
(調査情報部 上村 照子)