12月のと畜頭数は前年同月比9.1%減
欧州委員会によると、2022年12月の豚肉生産量(EU27カ国)は、181万2710トン(前年同月比9.6%減)とかなりの程度減少した(図1、表1)。同月の1頭当たり枝肉重量が92.2キログラム(同0.6%減)とわずかに減少したこと、また、と畜頭数が1965万頭(同9.1%減)とかなりの程度減少したことが影響した。
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)の分析によると、飼料費や燃料費など生産資材費の高騰や環境規制、また、EU域内外の需要の減少などが養豚農家の経営規模の縮小を招いたことで、22年12月の繁殖母豚は1038万頭(前年比4.6%減)と3年連続で記録的な減少を続けている。22年のEU域内の豚肉需要の減少の背景として、健康への配慮や調理の簡便性に加え、比較的安価な鶏肉への需要が高まったことが挙げられる。
一方、直近の飼料価格は幾分低下の兆候が見られ、枝肉重量のわずかな改善が予測されている。しかし、繁殖母豚の減少による子豚頭数の減少に加えて、アフリカ豚熱収束に向けた改善の兆しも見られないことから、23年も豚肉生産量の減少が見込まれている。
豚枝肉卸売価格、過去最高水準で推移
欧州委員会によると、直近の2023年3月20日の週の豚枝肉卸売価格(EU27カ国の平均)は、前年同期比27.7%高の100キログラム当たり233.13ユーロ(3万4321円:1ユーロ=147.22円
(注))と大幅に上昇した(図2)。欧州委員会は、豚肉生産量の減少による需給のひっ迫を、豚枝肉卸売価格の継続した上昇の一因としている。生産費のうち飼料費は低下基調にあるが、子豚頭数の減少によるもと豚価格の上昇から、肥育豚農家の生産費の低下は見込まれていない。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年3月末TTS相場。
22年の輸出量は10.2%減、中国向けが大幅に減少
欧州委員会によると、2022年の豚肉輸出量(EU27カ国)は774万4416トン(前年比10.2%減)とかなりの程度減少した(表2)。日本やフィリピン向けは増加したものの、中国向けの減少が大きく、主要生産国はEU域内向けの供給を増加させた。具体的には、スペインやデンマークは、生産量を大きく減少させているドイツやポーランドへの供給を増加させている。USDA/FASによると、23年の豚肉輸出量は、前年比0.5%程度の減少が見込まれるとしている。
(調査情報部 渡辺 淳一)