22年の鶏肉生産量は前年比微増
タイ農業協同組合省農業経済局によると、2022年の鶏肉生産量は242万7624トン(前年比1.0%増)となった(図1)。21年末に発生したアフリカ豚熱の影響
(注1)による鶏肉への代替需要や、コロナ禍からの脱却に伴う消費回復などにより前年をわずかに上回った。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、23年の家きん肉生産量は、旺盛な輸出需要や経済回復による国内需要の増加により前年比3%程度増加すると見込まれている。
(注1)海外情報「2022年の豚総出荷頭数、アフリカ豚熱などの影響で減少見込み(タイ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003182.html)を参照されたい。
国内の鶏肉卸売価格は下落傾向が継続
2023年2月の鶏肉卸売価格は、1キログラム当たり57バーツ(227円:1バーツ=3.99円
(注2))となり、22年10月以降、下落傾向が継続している(図2)。現地報道によると、肉用鶏生産者協会関係者は「外国人観光客の増加による鶏肉価格への波及効果があまり見られない」とし、需要の伸び悩みが価格下落の要因としている。また、「飼料価格の他、種鶏購入費、電気代、人件費などの高騰などから生産コストが膨らんでおり、生産量の抑制も検討せざるを得ない状況である」とし、政府に対して飼料価格高騰に対する支援を要請している。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年3月末TTS相場。
22年の冷凍鶏肉輸出量は前年並み
2022年の冷凍鶏肉の輸出量は、34万9017トン(前年比0.1%増)と前年並みとなったものの、23年1月は3万3013トン(前年同月比30.5%増)と前年を大幅に上回っている(表1)。コロナ禍からの回復により、世界的に鶏肉需要が増加傾向にあることが要因とみられる。輸出先別に見ると、飼料価格の高騰やアフリカ豚熱の影響から食肉供給が不安定となっているマレーシア向けが前年を大幅に上回った一方で、主要食肉である豚肉の供給が比較的安定している中国向けが前年を大幅に下回った。米国農務省(USDA)によると、23年のタイ鶏肉輸出量は前年比3%程度の増加が見込まれているが、23年上半期は世界経済への懸念が拭い切れないことから、鶏肉輸出量の伸びは緩やかなものとなる可能性が高いとみられる。
22年の鶏肉調製品の輸出量は大幅に増加
2022年の鶏肉調製品輸出量は、65万1812トン(前年比18.5%増)と前年を大幅に上回った(表2)。22年は、コロナ禍からの回復により世界的に鶏肉需要が増加傾向にある中で、工場労働者の確保が進み、供給体制の整備が進んだことなどにより前年を上回ったとみられる。
(調査情報部 海老沼 一出)