畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 生乳出荷量は5カ月連続で前年同月を上回り、乳価は下落

海外需給動向【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2023年5月号

生乳出荷量は5カ月連続で前年同月を上回り、乳価は下落

印刷ページ
23年1月の生乳出荷量、前年同月比0.9%増
 欧州委員会によると、2023年1月の生乳出荷量(EU27カ国)は1177万5570トン(前年同月比0.9%増)となった(表)。主要生産国の中でもドイツ(同3.6%増)、オランダ(同4.7%増)、ベルギー(同4.7%増)が前年同月を上回った一方、フランス(同1.4%減)、イタリア(同3.7%減)、スペイン(同1.4%減)は2カ月連続で前年同月を下回った。現地情報によると、フランスおよびイタリアでは干ばつの影響により、生乳出荷量が前年同月を下回っている。また、オランダでは、農業生産者が政府の窒素排出規制に大規模なデモで反発してきたが、オランダ州議会議員選挙では同規制の見直しを求めるオランダ農民政党が躍進したことで(注1)、同規制の実施や今後の生乳出荷量への影響が注目される。

(注1)海外情報「窒素排出規制の見直しを求めるオランダ農民政党、選挙で躍進(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003486.html)を参照されたい。

 
生乳取引価格、2カ月連続で前月を下回る
 欧州委員会によると、2023年2月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり54.75ユーロ(8060円:1ユーロ=147.22円(注2)、前年同月比28.8%高)と前年同月を大幅に上回った(図1)。一方、前月比では2.8%安となり、2カ月連続で前月を下回った。バターをはじめとした主要乳製品価格下落の影響を受け、生乳取引価格も下落の状況にある。欧州委員会は、生乳取引価格の下落と生産資材費の高止まり、また、高騰する牛肉価格の影響から23年は経産牛の淘汰とうたが進むと見込んでいる。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年3月末TTS相場。

 
乳製品価格は下落後、安定して推移
 欧州委員会によると、直近の2023年3月19日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり495ユーロ(7万2874円、前年同期比21.5%安)、脱脂粉乳が同256ユーロ(3万7688円、同34.7%安)と前年同期を大幅に下回った(図2)。バターおよび脱脂粉乳価格は、2月5日の週に底を打って以降、ほぼ横ばいで推移している。欧州委員会は、製菓メーカーなど需要者が今後の価格下落を見越して発注を先延ばししていることや、世界的な食料品価格の上昇が消費者の買い控えを起こしていることなどを要因に挙げており、今後の乳製品価格は需要の動向次第としている。

 
(調査情報部 渡辺 淳一)