生乳価格は一層低下
中国の生乳価格は、2021年9月以降、おおむね前月比1%未満の増減で推移
(注1)してきたが、23年3月は2カ月連続で前月比1%以上下落し、1キログラム当たり3.99元
(注2)(79円:1元=19.72円
(注3))となった(図1)。同国の生乳価格が同4元の大台を下回るのは、20年10月以来、約2年半ぶりのこととなる。
この要因について現地専門家からは、(1)政府の酪農振興政策によりここ数年で生乳の生産能力は大幅に向上した一方、(2)19年以降のCOVID−19拡大およびゼロコロナ政策に伴う収入減少などにより消費者の乳製品購買能力が低下していること、さらに(3)これまで乳業メーカーは、生乳を保存性の良い粉乳に加工することで需要減退に対応してきたが、吸収余力が限界を迎えたこと−が挙げられた。また、このような生乳価格の低下や飼料価格の高騰により、一般的に政府統計値より生乳価格が低いとされる地方を中心に、搾乳頭数を削減するなど苦しい状況にある酪農家が増加しているという。
(注1)2021年9月〜23年1月の間で、前月比1%以上の変動があったのは2回(22年1月:1.0%減、同年3月:1.5%減)のみ。
(注2)当該数値は中国農業農村部が毎週公表する数値の月内平均値であり、通例、小数第3位を四捨五入して示している。同月の生乳価格を小数第3位まで示した場合、1キログラム当たり3.998元であり、通例であれば「4.00元」と表記することとなるが、今回は、4元を下回ったことを明確に伝えるため、特例的に小数第3位を切り捨てた。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年3月末TTS相場。
乳製品輸入量は5品目で減少傾向継続
2023年1〜2月の主要乳製品輸入量は、前年同期比で8品目中5品目が減少した(表)。この中で特筆すべきは全粉乳の動きである。全粉乳はその9割程度をニュージーランド(NZ)から輸入しているが、同国からの全粉乳は自由貿易協定(FTA)に基づき、枠内に限って無税で輸入できることとなっている
(注4)。そこで、枠内数量を確保したい業者らの思惑から、毎年1月には全粉乳の輸入が集中(年間輸入量の2〜3割程度)していたが、23年にはこの動きは見られなかった(図2)。
この要因として現地専門家からは、(1)コロナ禍での飲用需要減退により乳業各社が粉乳製造に切り替え、その在庫が積み上がったことによる輸入粉乳需要の低下(2)NZとのFTAに基づき、24年以降は同国から数量制限なく無税で輸入できることとなるため、特別な理由がないものについては、来年1月1日以降に輸入するべく調整が行われている結果―などの意見が聞かれた。
(注4)海外情報「NZからの一部乳製品輸入、2022年から無制限に無税に(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003168.html)を参照されたい。なお、23年の発動基準数量(全粉乳、脱脂粉乳、無糖れん乳の計)は19万7498トン。
(調査情報部 阿南 小有里)