(1)肉用牛・牛肉
ア 飼養頭数は引き続き減少
2023年1月1日時点の牛総飼養頭数は、乳用種を含めて8927万頭(前年比3.0%減)と減少した(表2、図2)。内訳を見ると、経産牛は3832万頭(同2.6%減)、うち肉用種2892万頭(同3.6%減)と減少している。
さらに、22年の子牛出生頭数についても3446万頭(同2.0%減)と減少した。肉用繁殖用未経産牛頭数も516万頭(同5.8%減)、そのうち23年内分娩予定頭数も317万頭(同5.1%減)と減少しているため、今後もさらなる牛群の縮小が予想される。
同時点のフィードロット飼養頭数は1416万頭(同3.7%減)、フィードロット外の飼養頭数も2527万頭(同2.8%減)と減少した。23年の生体牛輸入頭数は、米国産肥育牛の頭数減少から、主要な生体牛輸入先であるメキシコからの輸入増により前年を上回ると見込まれる。
イ 牛肉生産量、かなりの程度減少
2022年の牛肉生産量は、干ばつの影響により繁殖雌牛の
淘汰が進むなど、と畜頭数が増加したことから、1283万2000トン(同1.2%増)とわずかに増加した(図3)。23年の牛肉生産量は、牛群縮小の影響などにより1201万8000トン(同6.3%減)とかなりの程度減少の見通しである。
ウ 肥育牛価格、3年連続で上昇
2022年の主要5地域の肥育牛平均価格は、供給の減少から1キログラム当たり円換算428.3円(前年比18.0%高)と大幅に上昇した(図4)。また。23年はさらなる供給不足が予測され、23年の肥育牛価格は同471.6円(同10.1%高)と前年を上回る高値となることが見込まれる。
エ 牛肉輸出量、かなり大きく減少
2022年の牛肉輸出量は160万4000トン(前年比2.8%増)と増加した(図5)。輸出先別では記録的なドル高の為替相場が輸出の逆風となる中で、日本、メキシコ、カナダ向けが減少し、韓国、中国、台湾向けが増加した。また、中国向けは旺盛な需要により28万6000トン(同16.8%増)と大幅に増加し、輸出量の増加をけん引した。
23年の牛肉輸出量は、国内供給量のひっ迫により140万2000トン(同12.6%減)とかなり大きく減少する見通しである。さらに豪州やブラジルの生産量の増加、国内の牛肉価格の上昇などが輸出市場における価格競争力の低下を招き、アジアなど主要市場で豪州などとの競合が見込まれる。
オ 牛肉輸入量、わずかに増加
2022年の牛肉輸入量は153万8000トン(前年比1.3%増)とわずかに増加した(図6)。豪州からの輸入量が大きく減少する中、ブラジル、カナダ、メキシコからの輸入量がそれを上回る形となった。中でもブラジルは、低関税枠を利用して大幅に増加(同26.4%増)している。
23年の牛肉輸入量は国内の生産量が減少傾向にある中で、155万4000トン(同1.0%増)とわずかに増加の見込みである。また、豪州では干ばつの改善や牛群再構築により牛肉生産量の増加が予測されるが、アジア市場での堅調な需要により、米国への輸入は限定的となる見込みである。
(2)養豚・豚肉の需給見通し
ア 飼養頭数、3年連続の減少
2022年12月1日時点の豚総飼養頭数は7312万頭(前年比1.8%減)と減少し、3年連続で減少した(図7)。これは豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)などへの疫病リスク、カルフォルニア州法による飼養規制の強化に起因する生産者の増頭意欲の減退などが考えられる。23年は、上半期にかけての増頭意欲の回復や、一腹当たりの産子数の増加などにより前年を上回ると見込まれる。
イ 豚肉生産量、わずかに増加
2022年の一腹当たり平均産子数は第1四半期に大幅に減少したものの、それ以降は増加し、23年もこの傾向が続くとみられる(図8)。23年の豚肉生産量は、と畜頭数と枝肉重量の増加により1244万5000トン(前年比1.6%増)と増加が見込まれる(図9)。
ウ 豚肉輸出量、前年並み
2022年の豚肉輸出量は287万5000トン(前年比9.8%減)と減少した(図10)。これは主要輸出先である中国への輸出量が大幅に減少したことや、ドル高の為替相場による米国産豚肉の価格競争力の低下などが考えられる。23年の豚肉輸出量は、生産量が増加する中で288万トン(同0.2%増)と前年並みとなる見通しである。
エ 豚肉輸入量、大幅に減少
2022年の豚肉輸入量は61万トン(前年比13.9%増)と米国内の豚肉需要の高まりを受け、前年からかなり大きく増加した(図11)。一方、23年の豚肉輸入量は、国内供給量の増加などから大幅な減少(同25.2%減)となる見込みである。
オ 肥育豚価格は下落基調
2022年の肥育豚平均価格は、国内供給が伸び悩む中で1キログラム当たり円換算211.2円(同5.8%高)と上昇した(図12)。23年の同価格については同197.2円(同6.6%安)と、国内供給量の増加により価格は抑制され、下落すると見込まれる。
(3)肉用鶏・鶏肉の需給見通し
ア 鶏肉生産量、わずかに増加
2022年の鶏肉生産量は、肉用種鶏卵のふ化率が低調であったものの、採卵用雌ひなふ化羽数が増加したことから2095万7000トン(前年比2.9%増)とわずかに増加した(図13)。23年の鶏肉生産量もこの傾向が続き、2118万3000トン(同1.1%増)と前年を上回る見通しである。
イ 鶏肉輸出量、わずかに増加
2022年の鶏肉輸出量は、輸出先第1位のメキシコ向けの減少(前年比7.6%減)などから330万トン(同1.0%減)と前年を下回った(図14)。23年は国内生産量の増加により332万トン(同0.5%増)と予測される。米国内の鶏肉価格の上昇に伴う海外市場での需要の低下や高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)による輸出制限の影響などから、わずかな増加にとどまる見通しである。
ウ 丸鶏卸売価格は下落
2022年の丸鶏卸売価格は、鶏肉需要が高まる中でそれに見合った供給の不足から、1キログラム当たり円換算416.7円(前年比38.8%高)と大幅に上昇した(図15)。23年は国内供給量の増加などにより、同375.2円(同10.0%安)と下落が予測される。
(4)採卵鶏・鶏卵の需給見通し
ア 鶏卵生産量、やや増加
2022年の総鶏卵生産量は、飼料高やHPAIなどの影響により91億3000万ダース(前年比1.1%減)とわずかに減少した(図16)。23年はHPAIからの回復により94億万ダース(同3.0%増)と増加に転じる見通しである。
イ 鶏卵価格は下落
2022年の食用鶏卵の価格は、HPAIによる大幅な供給不足の影響により年初から一貫して上昇した(図17)。1ダース当たりの鶏卵卸売価格(円換算)は、第1四半期の229.8円から第2四半期には338.5円、第3四半期は397.7円となり、第4四半期には553.9円まで上昇した。23年はHPAIからの回復により供給量の増加が見込まれ、鶏卵卸売価格は下落すると見込まれる。
ウ 鶏卵輸出量、かなりの程度増加
2022年の鶏卵・鶏卵製品輸出量は、国内供給量の減少により、殻付き換算で2億2700万ダース(前年比42.2%減)と大幅に減少した(図18)。国別では主要輸出先である韓国、メキシコ、香港向けが大幅に減少している。23年の輸出量は、国内生産の回復により2億4000万ダース(同6.0%増)とかなりの程度増加する見通しである。