畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 鶏卵卸売価格は300円台で推移

国内需給動向【鶏卵】畜産の情報 2023年6月号

鶏卵卸売価格は300円台で推移

印刷ページ
 令和5年4月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり350円(前年同月比139円高)となり、8カ月連続で前年同月を上回った(図1)。2月以降は300円台の高水準で推移している。
 同価格は、3月は月内に3度の上昇を経て350円となったが、4月は終始350円が続き、高水準を維持し価格の変動はなかった。前月との価格差を見ると、2月は47円高、3月は16円高、4月は7円高となっており、徐々に差額の幅が狭まっている。また、生産コスト高や、高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)による採卵鶏の殺処分などの影響による供給不足などから、同価格は高止まりの状況となっている。
 今後の供給量については、HPAI発生農家でのひなの導入再開まで約半年、発生前の飼養規模に戻るまでは約1年かかるため、徐々に生産量が回復するものの、引き続き影響が続くとみられている一方、需要面は、COVID−19の「第5類」移行により、外出の機会、旅行やインバウンド需要の増加による外食業界の回復が見込まれている。このような中、外食店舗の鶏卵を使ったメニューの一時的な中止や家庭でのテーブルエッグの買い控えなど、消費への影響が懸念されている。

 
令和3年の鶏卵産出額は前年を大幅に上回る
 令和5年3月17日に農林水産省が公表した「令和3年農業総産出額及び生産農業所得」(確報)によると、令和3年の鶏卵の総産出額(全国)は5470億円(前年比20.3%増)と前年を大幅に上回った(図2)。


 
 これは2年11月〜3年3月にかけて大規模発生したHPAIによる影響で生産量が減少したことや巣ごもり需要が続いたことなどの影響で価格が上昇し、鶏卵産出額が大幅に増加したものと思われる。平成30年〜令和2年は前年を下回って推移していたが、令和3年は4年ぶりに前年を上回った。
 鶏卵生産量は平成27年以降、家庭用、業務加工用ともに需要が旺盛であったことなどから、増加傾向で推移し、28年以降は毎年約260万トン台の生産量で推移している。一方で産出額は、26〜29年は5000億円台で推移していたが、30年および令和元年では、生産量は増加したものの鶏卵相場が低い水準で推移した結果、ともに前年を下回る水準となった。さらに2年は、前年に比べ3億円減少し、4546億円(前年比0.1%減)となった。これはCOVID−19の拡大の影響により業務用需要が減少したことや、HPAIの発生による生産量の減少などの影響を受けたものと思われる。
 都道府県別の主な生産県の鶏卵産出額(都道府県別推計)(注)を見ると、最も産出額が大きかったのは茨城県で502億円(全国シェア9.0%)となった(図3)。第2位は鹿児島県で316億円(同5.7%)、第3位は岡山県で309億円(同5.6%)となった。次いで、広島県は280億円(同5.0%)となり、今年度は第5位に栃木県が入り255億円(同4.6%)となった。
なお、前年2位だった千葉県は、HPAIの発生の影響などから第6位247億円(同4.5%)となった。

(注)都道府県別推計は、他の都道府県に販売された中間生産物(最終生産物となる農産物の生産のために再び投入される農産物をいい、種子や子豚、種卵などが該当する)を農業産出額に計上するため、都道府県別推計の合計値と全国推計の農業産出額は必ずしも一致しない。 




 
(畜産振興部 生駒 千賀子)