肉牛価格は今後も軟調に推移の見込み
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、軟調に推移している(図1)。同価格は、2023年3月末から4月上旬にかけ、下落傾向から反転して1キログラム当たり700豪セント(637円:1豪ドル=90.98円
(注))近くまで上昇したが、4月24日時点では同680豪セント(619円)となった。
現地報道によると、今後は食肉処理施設の労働力不足に伴うと畜頭数の伸び悩みに加え、牛群再構築完了により子牛供給が増加しているため、同価格は引き続き軟調に推移し、年末までに同640豪セント(582円)程度になる可能性が高いとしている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年4月末TTS相場。
成牛と畜頭数は堅調に増加
例年4月は豪州の祝日が多く、食肉処理施設の稼働日数が制限されるため、成牛と畜頭数が前月から減少する傾向にある。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、牛群再構築の完了により2023年3月まで成牛と畜頭数は増加傾向で推移しており、同月第5週は20年以来の高水準となる11万6499頭(前年同月第4週比24.8%増)であった(図2)。23年4月第1週は8万3341頭と前週比で28.5%減少しているものの、前年同月同週比では12.4%増とかなり大きく増加している。
牛肉輸出量は主要国向けが軒並み大幅増
豪州農林水産省(DAFF)によると、2023年3月の牛肉輸出量は9万8978トン(前年同月比33.1%増)、同年1〜3月の累計でも22万828トン(前年同期比24.6%増)と、いずれも大幅に増加している(表)。
輸出先別では、主要国向けが軒並み増加する中で、日本向けは2万461トン(前年同月比1.9%増)とわずかな増加にとどまった。一方、中国向けは、2月下旬にブラジルでの非定型BSEの発生により、同国からの牛肉輸入が停止されたことから、輸入業者が豪州産などに調達を振り替えたため、1万9958トン(同48.0%増)と大幅に増加している。しかし現地報道によると、中国はブラジルからの牛肉輸入停止措置を短期間で解除したため、中国向けの牛肉輸出量の増加は、単発的なものになる可能性があるとしている。他方で米国向けも、1万7305トン(同55.3%増)と大幅に増加している。MLAによると、同国の干ばつによる牛群
淘汰から牛肉生産量は依然として高水準であるものの、ピーク時からは減少しており、中長期的な生産量の減少を考慮して、輸入業者は豪州などからの牛肉輸入量を増やしているとしている。また、3月の米国向け加工用牛肉価格(90CL(赤身率90%のひき肉))も、前月から約20%上昇したとしている。
(調査情報部 国際調査グループ)