総飼養頭数、繁殖雌豚頭数ともに減少に転じる
中国農業農村部によると、2023年3月末時点の豚総飼養頭数は4億3094万頭(前年同月比2.0%増)と前年同月をわずかに上回るも、前期(22年12月末)比4.8%減と減少に転じた(図1)。また、繁殖雌豚頭数も同様に4305万頭(前年同月比2.9%増)とわずかに前年同月を上回るも、前期比1.9%減となった。23年3月末時点の繁殖雌豚頭数は、同部が最適な水準としている4100万頭程度から5%上回っている状況にあるが、減少に転じたことで徐々にこの水準に近づいている。
23年3月の豚と畜頭数は、前年をやや上回る
2023年3月の中国国内の豚と畜頭数は、2669万頭(前年同月比3.0%増)と前年同月をやや上回った(図2)。また、同年1〜3月の豚肉生産量は1590万トン(前年同期比1.9%増)とわずかに増加した。飼養頭数が引き続き高水準にある中で、大規模生産者を中心に出荷頭数が多い状況が続いているとされる。
豚肉価格は引き続き低水準で推移
豚肉価格は2022年11月から下落に転じており、23年3月の豚肉価格は前月比2.5%安の1キログラム当たり26.4元(519円:1元=19.65円
(注))となった(図3)。前述の通り供給量が増加する中で、春節需要も一段落したことから、価格を支えるほどの需要がない状況にあるとみられている。米国農務省(USDA)によると、中国国内でアフリカ豚熱の新たな感染が報道されたことにより、一部の生産者からの突発的な出荷が相次いだことも豚肉生産量の増加および価格の低下を招いた可能性があるとしている。今後の見通しとしてUSDAは、22年末から23年の初めにかけて拡大していたCOVID−19の影響は落ち着き、外食産業や学校、企業の食堂などを中心に業務用需要が回復に向かっているとしている。このため、23年の豚肉需要は回復し、今後さらなる価格の低下が起こる可能性は低いとみている。
今後の豚肉価格に影響を与える子豚価格を見ると、23年2月に上昇に転じ、同年3月は同10.7%高の同37.7元(741円)となった。また、国家発展改革委員会などが実施する国家備蓄による豚肉の買い入れは同年2月24日を最後に実施されていない(23年4月末時点)。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年4月末TTS相場。
23年1〜3月の豚肉輸入量は前年同期を上回る
2023年1〜3月の豚肉輸入量は、52万8093トン(前年同期比28.1%増)と前年を大幅に上回った(表)。この背景として、COVID−19に関連した規制の緩和に伴い、輸入豚肉の検疫も緩和されたことなどにより、輸入量の増加につながったとみられる。しかし、国内豚肉価格が低水準で推移していることから、以前のような世界の豚肉需給に影響を与えるほどの増加にはなっていない。
(調査情報部 海老沼 一出)