生乳生産量は引き続き減少
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2023年2月の生乳生産量は55万4809キロリットル(57万1453トン相当、前年同月比5.3%減)となり、21年12月以降15カ月連続で前年同月を下回った(図1)。この結果、同月までの年度累計生乳生産量(22年7月〜23年2月)は577万8471キロリットル(595万1825トン相当、前年同期比6.5%減)となった。
この要因についてDAは、肉牛価格や地価の高騰、労働力不足などの「pre-existing pressures(既存の圧力)」に加え、生乳生産量のピークを迎える春期(9〜11月ごろ)の多雨や洪水による飼料作物や搾乳牛などへの被害を挙げている。これらの影響から、今年度(22年7月〜23年6月)の生乳生産量は、800万〜820万キロリットル(824万〜845万トン相当、前年度比4〜6%減)になると見込んでいる
(注1)。
(注1)海外情報「2022/23年度の生乳生産量は4〜6%減少の見込み(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003487.html)を参照されたい。
次年度乳価への注目が高まる
今年度の生産者支払乳価は、生乳生産量が減少する中での乳量確保に向け、多くの乳業が生乳の固形分
(注2)1キログラム当たり9豪ドル(819円:1豪ドル=90.98円
(注3))以上を提示するなど歴史的な高値となっている
(注4)。今後の生乳生産量については、「既存の圧力」の継続が見込まれることなどから、次年度も大幅に増加する見通しは立たない状況にある。一方、最近の乳製品国際価格に目を転じると、中国の乳製品輸入需要の回復が業界予想に比べて遅れをとっていることなどから動きが鈍い状況にあり
(注5)、輸出向け商品で収益の確保を見込むことが困難な状況にある。これらの状況から、豪州の農業系金融機関ルーラルバンクによると、6月1日までの公表が義務付けられている次年度の当初乳価
(注6)の設定に当たって、乳業各社は難しい判断を迫られているという。
一方、現地報道では、ロシアのウクライナ侵攻を背景とした飼料価格の高騰などから酪農の投入コストが増大しており、生産者からは同10豪ドル(910円)以上
(注7)の設定を期待する声が上がっている。
(注2)乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年4月末TTS相場。
(注4)『畜産の情報』2023年4月号「生乳生産量、30年ぶりの800万キロリットル台割れの懸念」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002669.html)を参照されたい。
(注5)海外情報「乳製品取引価格、主要4品目で上昇も不透明な状況が続く(NZ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003519.html)を参照されたい。
(注6)前年度の6月1日までに「酪農業界における行動規範」に基づき、乳業各社などに公表が義務付けられている次年度の生産者支払乳価。
(注7)本年度の大手乳業などの当初乳価は同8〜9豪ドル台が多かった。「2022/23年度の当初乳価は記録的な高値(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003273.html)を参照されたい。
主要乳製品輸出量、3品目で大幅減
DAが発表した2023年2月の主要乳製品4品目の輸出量は、チーズを除く3品目で大幅に減少した(表、図2)。
最も減少率が大きかったバターおよびバターオイルや、次に減少率が大きかった脱脂粉乳が半減したほか、全粉乳でも4割近い減少を記録している。これらの減少要因は、いずれも、中国をはじめとしたアジア向け輸出の不振にあるとみられる。一方、チーズは最大の輸出先である日本向けなどの増加を背景に、小幅ながらも増加した。
(調査情報部 阿南 小有里)